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大阪選手優勝の陰に明確な強化計画と実行あり!!

 大坂なおみさん、全豪オープン優勝&世界ランキング1位、おめでとう!!
 2019年1月26日、大坂なおみさんが、全豪オープンを制し、昨年9月9日の全米オープンに続きグランドスラム大会を連勝しました。本当にあっぱれ!!です。おめでとうございます。

 全米オープン制覇後、他の選手に研究され、また、スポンサーやマスコミ対応の忙しさの中、わずか4ヶ月をオフを含め素晴らしい過ごし方で、より強く、素早く、逞しくなって、ここ2年ほど群雄割拠の女子ツアーでは誰も成し得なかったグランドスラム二連勝を達成しました。
 報道によれば、フットワーク(特にスピード)と体幹の強化を目指し、オフには相当な走込みやメディシングボールを用いた体幹トレーニングなど、ボールを打たない体の強化を行い、その結果、フットワークはもちろんのこと、ストローク中でも強いボールが打てるようになったとのこと。また、これに合わせて、ラケットも最適化して、より固いストリングスでボールのスピン量が増え、強くて深いストロークも獲得したようです。
 弱点と言われていたメンタル面ももちろん進化し、全豪オープンでは勝ち上がる毎にステップアップしていったように見受けられました。自身も「この舞台で戦えることがすでに素晴らしいことなので、悲観しない」との考え方で、ネガティブな気持ちをコントロールしたと語っていました。しかし、さすがに決勝戦の第2セットを逆転で失った直後は応援する側も「ヤバい」と思い、最終セットを固唾をのんで見守りましたが、杞憂に終わり最後の歓喜を迎えることが出来ました。今回の勝利できっと強靭なメンタルも手に入れたと期待したいものです。

 最近のビジネスシーンでは、わずかな期間の油断が企業の命運を分ける、つまりは市場の変化がとても早い、例えば、消費や技術動向、政治や国際情勢、為替や景気動向なども短期間で激烈に変化し、その対応を誤ると成長や安定のシナリオは昔では考えられないようなスピードで一気に崩れる時代となっています。しかし、大坂なおみ選手およびチームの皆さんの強化計画は見事と言う他なく、次の成長に向けた確実な戦略で結果を出しています。この短期間で素晴らしい成果に辿り着いたことは、大坂なおみ選手の素質や潜在能力を負うところは大きいと思いますが、計画と実施の見事さに注目すべきで、ビジネスでも見習うべき点を多く見つけることが出来ます。
 さらに大坂なおまさんの個性が光り、認められた側面もありますが、多くのファンが応援する、応援したい気持ちとなったことも、躍進する力の一助となったことでしょう。反面、崩れていく場合、その一因は、SNSなどによるネガティブな情報の拡散スピードの加速も忘れてはなりません。
ビジネスにおいても、ファンは重要で「移り気な消費者」を如何にして惹きつけ続けるかは、情報量が莫大に増加した現在、とても難しい課題です。呆れるほどのスピードで新しい工夫を凝らした製品、広告が溢れる今、単に誠実なだけでは持ち堪えることが困難です。
 ビジネスにおいて、消費者、市場(マーケット)、ユーザーや購入企業、ステイクホルダーとどのような対話や会話、情報発信を続けて行くかが問われていると思います。もちろん革新的で魅力ある製品、世の中を楽しく便利にする製品を提供し続けることは重要ですが、知らしめ続けることが大きくビジネスの勝敗を決する時代となっているのではないでしょうか?

 Sansanの「それを早く言ってよ〜ぅ」やベンフェイスの「営業はヒラメ筋、ではなくこれからはデスクで営業する時代」は正に過渡期を先端的な考え方が揶揄するCMですが、あっと言う間にそれが当たり前の時代がやってきそうです。

 最後に大阪選手の勝利の要因に戻りますが、スピードに拘らずコースを突いたファースト・サービス、相手のセカンド・サービスに対する超攻撃的なレシーブなど戦術面での進化も忘れることは出来ず、これもビジネスも同様、大きな戦略と綿密な戦術が勝利の両輪と言うことでしょうか..,

2019年01月28日

サブスクリプションが次世代ビジネスモデルの本命か?

 消費などの動向が大きく変化し、所有することの価値観、つまりは喜びや優越感が総じて小さくなっていっているような時代となってきました。所有することの最大の目的はその機能を使用することによって、便利、効率、流行、満足感、ひいては優越感を得ることでありました。しかし、時代が大枚を一時に支払わなくてもリユース、シェアリング、一部はマッチングなどで、それを満たしてくれるインフラがインターネットの大衆化により整備し始めて大きな変革が起きてきました。
 そんな中、完成品の製造メーカーは、ものが売れない未来を予想し、一部のITを駆使したマッチングやシェアリング・ビジネス企業に売上と利益を奪われる時代となっていくことを真剣に危惧し出し、製品の製造メーカー自身がシェアリングやサブスクリプション(※)・ビジネスに取組み始めました。
 この動きは、最終的にはC to CビジネスだけでなくB to Bビジネスにも広がり、IT設備、産業・生産設備にまで及んでいくものと思われます。これからの時代の新しいビジネスモデルとして、マッチング、シェアリング、サブスクリプションと進んで行くことは、疑う余地が非常に小さくなってきており、サブスクリプション・ビジネスを製造メーカー自身が始めることは、IT系企業から売上と利益を奪還する戦略の流れでもあると思われます。

 特に自動車産業ではその流れは環境対応などの社会的要求もあり他の産業分野より大幅に急速で、劇的な技術革新を伴う大変革が始まっています。ダイムラーが10年も前から、「car2go(カーツーゴー)」と言うカーシェアリングサービスを展開していたことは大きな驚きでしたが、欧州を中心にすで「世界中で8,500台が利用され、400,000人以上の会員数を誇る」サービスへと成長しているそうで、緩やかだった流れの急激な変化は驚くばかりです。自動車が所有するものから移動する手段として機能を適宜購入・使用するサービス、つまりはシェアリングやサブスクリプションへと転換していくことが容易に想像できますし、その先にはモビリティー・サービスと言う新しい産業形態(インフラに近いもの)が形成されそうな勢いです。この傾向が進んでいくドライビングを楽しむ趣味的な行動を除く一般的な車は完全に移動する手段としての機能を求めるものとなり、所有する車の台数はシェアリングなどにより大幅に減少すると多くの経済アナリストなどが予想されていますので、モビリティー・サービスと言う新産業形態まで発展させることが自動車産業の将来の生命線とも言えるかもしれません。巨艦トヨタでさえ、この流れに対応するための試験的試みとして、2019年からサブスクリプションによる高級車の提供を始めることを発表しました。

 しかし、自動車メーカーは、このシェアリングの普及に留まらず、さらにEV化と他のふたつの100年に一度と言われる大きな技術革新への対応も迫られており、前述のふたつに接続性、自動運転を加えたCASE(接続性:Connected、自動運転:Autonomous、共有:Shared、電動化:Electric)と言われる大きな4テーマへの取組みが加速しています。機械と制御技術の自動車産業が、IT、IoTを取込んだ産業構造へ大変革し、主役をIT系企業に渡さぬように多額の投資、M&Aで急速な対応強化を目指しています。そんな中、トヨタがソフトバンクに従来では考えられなかったソフトバンクに提携を持ちかけるなどと言うことが起きました。20年前には車のIT化提案を持込んだ孫社長をトヨタが断ったことからすると、まさに隔世の感です。

 日本にとって現在もっとも競争力のある産業である自動車産業が、過去の鉄鋼、造船、半導体などのように凋落の憂き目に遭わず、この大変革の大波を乗り切ってくれることを望まずにはいられません。また、その先には日本の車載用半導体・電子部品・センサー、自動車用軽量材料・素材、AIなどの先端技術関連企業の再興が期待されるのですから。


※ サブスクリプション
古くは書籍の定期購読などを指す言葉でしたが、現在はソフトウェアの期間定額制でMicrosoftのOffice 365、AdobeのAdobe creative cloud、AppleのiCloudなどで普及していますが、いよいよもの(製品:服、アクセサリー、車、機械など)の機能の使用権を借り、期間に応じて料金を払うと言う形に進化してきています。正確には「借りる」「買う」などとは異なる新しい概念ですが、「使用権を借りる」と言う感じが昭和の人間にはしっくりきますが...。

2018年11月07日

人生100年時代と言うけれど...

 先日、樹木希林さんが逝きました。ご本人がだいぶん前に「全身がん」と公表しておられましたが、その後も精力的にお仕事をこなしておられたので、驚かされました。
 その後、いろいろな報道があり、NHKの直前までの密着「”樹木希林”を生きる」を観て、多くを知ることになりました。女性の平均寿命が90歳に迫る今、75歳で亡くなられたので早過ぎる感もありますが、“がんと共に生きる”限定した治療で示された生涯現役の姿や生きることへの向き合い方に感銘を受けました。過度な医療で命を繋ぐのではなく、QOL(Quality of life)と”生きる"を使い切ることに潔く取り組み、淡々と最後まで自分(樹木希林)を貫いて、生き様の爪痕を多くの人々の心に残され、心と記憶に残る人であったと思います。
 ちょっと見は淡々とマイペースで突き放すようなもの言いの樹木希林さんが、成人式のゲストとして参加した際に新成人ひとりひとりに渡された手紙には、強く生き抜いた人生の示唆と未来を担う若者への愛情が溢れていて、それを頂いた若者たちを心から羨ましく思いました。
その上、毛筆で書かれたその手紙の文字、書体、あるものには自分の顔の絵があり、それがまた美しく、温かいのですから…
 また、密着取材の中で樹木希林さんが「肉体は現世の借り物。生きてる間に使い切らなきゃ。」と言うようなことを仰っていました。日本人の死生観とちょっと異なる考えで、このようなところも最期の潔さ、逞しさに繋がっているのでは、と感じました。LGBT先進国のタイでは仏教観から「肉体は現世の借り物で、中身に入る精神が男でも女でも関係がない」とも思われていると聞きましたが、そんな宗教観と少し似ているのかもしれません。そんなタイは、いよいよ同性婚などを認める法改正を年内に行うようです。
 樹木希林さんが、輪廻転生し、また個性的な女優として、素敵で逞しく温かな感性をもう一度みせてくれることを期待するのは私でけではないかもしれません。

 この原稿を書き上げた頃、樹木希林さんの告別式の様子が報道され、娘・也哉子さんや娘婿・本木雅弘さんの挨拶やコメントから、規格外のご夫婦であった樹木希林さんと内田裕也さんの本当に予想外の純愛物語を知るに至り、もう一度驚かされることになりました。

2018年10月02日

区別と差別

 LGBTに関する論文の寄稿やその後の対応で自主的ではあるものの新潮45が休刊に追い込まれました。
 精神医学などの進歩により、肉体的性別と精神的性別が異なる人々が先天的にいるのことが分かり、また、愛情の形も多様化していることから、世の中はLGBTの人々を差別しない、権利を保護する、との方向に向かっています。しかし、精神的な部分の多くは後天的な親子、家族関係や教育で醸成される部分も多く、多くの批難を浴びた「性癖あるいは性的嗜好」と言われる部分も一方的に否定することはできないと思えてきます。新潮45の中では、過激な文言で比喩されていましたが、すべて人々のすべて嗜好を弱者保護の立場で受け入れることはとても困難であることは間違いありません。ただし、家族として支え合って生きているのに、病院の処置の承諾や付き添いなどの保護者、代理人としての権利、婚姻できないために法定相続権がない(ただし、これは遺言書をお互いに作成すれば済むこと)など、新しい家族の形態として社会的に認める必要がある部分もあります。
 確かにLGBTの先駆者が芸能、ファッションなどの分野でその特質を存分に発揮して活躍され、社会的地位を築き、多様性としての存在感を示していますが、過度に肩入れする必要もないように思います。お金のため、嗜好のひとつ、ファッションとしてLGBTである人々とそれでしか生きられない人々は差別ではなく、区別して新しい家族関係を支援できればいいのではと思います。

 女性の社会進出に関しても、前のめり過ぎの印象を持つのはすでに古い考え方なのでしょうか。例えば、古い日本的な父系家族も女性の平等、社会進出を促進する阻害要因のように言われることも多くなってきていますが、これができていたことで、母子関係の絆を強め、奇跡的な戦後復興が可能となった一因と思えます。現在の女性の社会進出要請は、日本の労働力人口減少対策と国家活力維持が主因で、本当に豊かな国民生活の構築とは少し違うところに向かっているような気がします。家族でひとりだけが働いて充分な収入が得られれば、夫婦共働きを望む比率はそれほど高くないでしょう。
 区別や分業であったものを悪役「差別」に塗り替えて論じないようにすることも、多様性社会になればなるほど必要な分別と思えます。女性の社会進出については女性社長比率、女性政治家比率など、よく世界各国の順位付けなどで語られますが、すべてを横並びでみるだけでなく、固有の文化的背景など歴史的価値観と今後の社会構造などをもっと科学的かつ統計的にみて論じる必要がありそうです。
 少し極端な例ですが、サウジアラビアが女性に運転免許を解放したことは、歴史的、宗教的慣習を超えて脱石油後の国家運営への女性労働力の戦力化を見据えた改革で、国家としてのグランドデザインを感じることができます。もちろんサウジアラビアは、それ以外にも、新技術への大型投資ファンドの設立、太陽光発電事業での海外との提携など次々と施策も将来に向けた施策を行っていることは周知の通りです。

2018年10月02日

リーダーと組織

 女子レスリング、アメリカンフットボール、今度はボクシングとアマチュアスポーツで、いろいろな問題が起きています。正確には起きていたことが暴かれると言う方が適切かもしれません。そこには、アマチュア・スポーツが大きく変わってきた(お金になる事業になってきた)ことはもちろんですが、弱く小さな組織が成長し大きくなり成熟していく過程の問題点としてベンチャー企業の場合と同じように現れていると思います。
 弱小組織が優秀な人材や資金を集めて力強く成長を始めるためには、明確で正しいビジョンとそれを牽引する情熱が必要ですが、その中心にはやはり強いリーダーシップを持つ中心人物とそれを支持して同じベクトルで力を合わせる仲間が不可欠です。特に中心人物(リーダー)には、資金を集める能力と外部協力者を開拓する能力が求められ、それを仲間が活用して組織基盤を強固にしていき、成果を上げていく訳です。この過程では、どうしても中央集権的な組織構造となり、リーダーひとりに権力と利権が集中し、側近の仲間がそれに与かる形となり易く、どうしても公平・公正な組織ルールや監査・牽制体制の構築は後回しとなってしまいます。この点において、マイナー・スポーツの連盟などの組織とベンチャー企業にほとんど違いはありません。また、成功に向かい大きな成果が得られるまでは、集中する権力も利権もありませんので、問題は発生しない訳です。有名ベンチャー企業でも、パワー・ハラスメントなどで創業社長が退く例も多く見受けられますが、企業の方がある程度の成長を遂げた後の内外からの監視は厳しいように思います。
 日本においては、親分子分や師弟関係を美化するような傾向が強いように思われますが、価値観が大きく多様化している今ではすでに古くなってしまった考え方と感じます。成果は成し遂げた人自身のものであり、親や師はオーディエンスと同様に素直に祝福する側にまわる時代かと...
 ふっと「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と言う言葉を思い出し、主張することも必要とされる昨今のビジネス環境の基、なかなか難しいことですが古き良き日本流の誠実な美学の復活を願う気持ちも湧いてきます。

2018年08月03日

時代は変わり...

 日大フェニックス(アメフト部)のルール破りの危険なタックル問題は、ドンドン大問題に発展してしまっています。
 日大側の危機管理の仕方のマズさが、より一層問題を大きくしていることは明白ですが、アメフトの試合と言う衆人環視の環境下ではある出来事がこれほどまでに断片的ではあるとは言え多くの映像として事実が残される時代になったことは驚きです。特にアメフトと言う競技が組織的フォーメーションや戦術を重視するスポーツで、チーム自らが多くの動画を試合後の分析などのために残していたことも重要な不正の発見と立証の要素であったことはいうまでもありません。また、観客のスマホなども過去には期待できなかった鮮明な記録を残すことが可能となっています。さらに、SNSを中心とした新しい情報発信ツールが一瞬の不正を一気に拡散し、クローズアップする力を有することも今のこの高度なスマホ社会の上に立脚しています。
 危機管理において、事実を隠す(隠蔽する)あるいは歪曲させることが最もしてはいけない、また、問題を過度に大きくすることをまざまざと示しました。不祥事の終息方法として、「トカゲの尻尾切り」のような安易な方法は、後から後から明らかにされる多角的事実やSNSなどから発信される大衆の圧力に抗えないということでしょうか。ましてや、ここにマスコミが追い打ちをかけ、バックグラウンドや組織・体制など直接関係がないと思われる不正ではないが不自然かつ公正でない事実を見つけてくるのですから。今回は、日大の経営体制やその硬直化し旧態然とした権力集中の構図まで暴いてしまいました。相撲、女子レスリング、女子バトミントンとパワハラ系の不祥事やスキャンダルが続き、その視点でマスコミが追求するのかと思いきや、日大のガバナンスに焦点を向けられるとは、日大関係者、特に経営幹部は思ってもいなかったでしょう。しかし、この点より、スポーツでの指導者と選手、アマチュアスポーツにおける名声、権力、お金の問題をしっかり追いかけ、健全な学生スポーツそのものの在り方、最新のスポーツ指導への大変革などを若者を正しく守り、その上で輝かせるためにもっと議論を深め、必要なバックアップ体制や規律を再構築してもらいたいものです。
 私の世代からすると日大のガバナンスは、巨大組織の強力な運営方法としては、民主性や柔軟性は大きく欠如しているもののマスコミが大騒ぎして幹部の責任を厳しく追求するほど、「悪」ではないように思う部分もあり、その時代時代に即した方法で日大発展に尽くした功労を全否定するのは如何なものとの思いも...、少しの同情の気持ちが湧き上がるのは時代錯誤なのでしょうか?

2018年06月06日

新しいビジネスモデルの包囲網、税と規制

 インターネットの普及が個人と個人、企業と個人を繋ぐ方法のハードルを大きく下げ、スマホがそれをいつでもどこでもの極々身近なものへと進化させて、購買行動やサービスに対する利便性・対価の考え方を衝撃的に変化させました。実際の購買行動においては、デジタルギアや家電大好きな私も、先ずは登録しているメルマガで情報を得て、ネットで調べ、価格.comでどこで買おうか吟味して、ネット注文と言うケースがとても多くなりました。昔は、秋葉原(なぜか小さい店舗好きでヨドバシには滅多に足を運ばず [笑])、ビックカメラ有楽町店、ヤマダ電機LABI新橋店、ヤマダ電機池袋総本店が大のお気に入りで、数時間カメラ、パソコン、家電などを見て歩くのを散歩と称して、休日ひとりで出掛けるのが楽しみでした。しかし、物色して歩く楽しみは別として、モノとして趣味性のないもの、まだ詳しくないものはネット調査からそのままネット注文することが非常に多くなっています。
 店舗を構え、商品を展示し、よく教育された販売員を配置してモノを売ると言うことが非常にコストの掛かることも分かっているので、タダ見は申し訳ないと思い、価格交渉にかなり対応してくれるヤマダ電機などでは昔ながらの買物の仕方を楽しませてもらったりしています。しかし、価格に関しては、価格.comの最安値がベースな訳ですから、お店側は堪ったもんではありません。多少の差なら、ポイントアップなどで近づけてもらい店舗で買うようにしているのは、いつも散歩をさせてもらっているお礼の意味もありますが...。
 そんな環境ですから、Amazonなどが取扱製品をどんどん増やし、出品する企業、店も続々と増えているのはリアル店舗で販売を展開する企業、店には大きな脅威で、いよいよそれに対する包囲網が検討され始めました。リアル店舗からすれば、ネット通販(EC)は商品展示をリアル店舗にただ乗りしていると言う認識になるのはある意味当然で、悪意がなくても現在の消費者動向は大きくその方向に傾き、リアル店舗での苦戦が続いています。唯一無二の製品を自社のリアル店舗と独自ネット販売するAppleのような形態は断トツの製品力が必要で、通常のコンシューマ向け製品では消費者の嗜好の多様化が進んだ現在ではほとんど不可能に近く、製品力のある製品をつくるメーカーでもネット通販と一般販売店(リアル店舗)を併用する場合がほとんどです。さらに、販売店に価格統制などをすると独禁法に抵触するので問題はより複雑です。
 商売、事業の観点からみると消費者に恩恵を与えた者が対価を得ると言うことが正しいと思われますが、この点でリアル店舗がショールーム化して販売時の利益を得られないことは正当ではなく、悪意のない今風の消費行動が不公平を生み出しているとも言えます。消費者が店舗を調べ歩いて製品および価格の比較をして購入する場合は、製品を調べることや価格の安い店舗を見つけるまでの労力に対して良い製品や安い購入価格という恩恵が直接消費者に還元されので不合理は感じませんが、リアル店舗がショールーム化している現状ではとの疑問が湧いてきます。とすれば、表向きは、平等な競争をするためには、ネット通販(EC)に対して税金を課して不公平感を是正すると言う発想かと思いますが、税の考え方は意地悪くみると「大衆が不満を持たない論理(屁理屈)がある取りやすいところから獲る」が一番やり易いことは消費税がなかなか上げられないことからも明白です。ただし、税金だからと消費者には直接関係がないと安心していると、税分がネット通販(EC)価格に反映され安いモノを買える可能性が下がるとの危惧もあるわけです。
 現状比較ではそんな危惧もあるわけですが、ネット通販(EC)の発達で、製造者と販売店の間にあった卸の業態がなくなり、流通の中間でのマージンがほとんでなくなったことで、消費者価格が下がったのは大きな恩恵ですが...。
 もうひとつの新しいビジネス包囲網は、Facebookが現在苦境に陥っている個人情報、フェイクニュース、不適切な広告などの問題です。インターネット、スマホの威力で個人と個人が容易に繋がれる、また、広告収入で運営するビジネスモデルが確立されたために利用者には費用負担がない、と言う素晴らしいものですが、運営企業に個人情報が集中する、集中すれば広告の効果が高くなる、そしてこの個人情報や広告などを悪用する者が現れる、と言う流れです。自由でスマートな場に悪意の参加者が現れ、不都合、問題、最悪は犯罪が起きることは、新しいビジネスモデルの成長期の中盤から後半で必ず起きることで、この時点で適正な規制が導入され利用者保護がなされれば定着し成熟期へと向かいますが、消費者保護が不完全な場合は急速に衰退してしまいます。Facebookの今後は、SNS全体の大きな方向を示す者として注目する必要があると思います。現状では、せっかく個人と個人が便利に繋がるインフラに近いレベルまで成長してきた新ビジネスモデルですので、現状の問題点を乗り越え、クリエイティブなコミュニケーション・ツールとして更なる最長を期待しますが、どこまでクリエイティビティーを保てるかが心配なところです。
 新しいビジネスモデルと言う意味では、仮想通貨、ICO( Initial Coin Offering )がすでに規制の風にさらされていることはご存じのとおりですが、こちらも今後どのような展開となるか注目するところです。

2018年04月18日

地方創生の困難

 二年半くらい前に近くの大学に地域創生学部を新設する直前イベントで一般参加可の講演会があり、麻生太郎副総理が特別講演をされたのを聴く機会に恵まれました。さすが一流政治家、話はうまい、姿もカッコいいでしたが、地域創生に関して耳に残る言葉がひとつあり、見方が違うなぁと感心し、今でも覚えています。その言葉は、「地域創生(振興)とは、夜8時に人々が活き活きした街を創ること」というもので、商店街の人の行き来だけでなく、飲食店、旅館などの宿泊施設、はたまたご近所の寄り合いなど、何かしら人同士が繋がりを持って活動している状況のできている街と解釈しました。しかし、この短い一言がとても難しいことで、最近のテレビ番組で紹介される昭和レトロな商店街は夕方6時にはほとんどの店が閉まり、近隣に住むサラリーマンが帰宅の途につく際には暗がりとなっています。
 そんな中、頑張ってるなぁと思うのは地元の個人経営のクリーニング屋さんでしょうか。朝の出勤時に預けて、帰宅時に受け取れるように、朝8時~夜8時の12時間営業を結構高齢のご主人とそのお子さん世代の二世代で頑張っておられます。もうひとつ、近所の洋食屋さんも毎日ではありませんが、夜の8時に人の集まる場所になっています。元々は大学が近くにあり、郊外移転で少し寂れてしまったようですが、町内会の寄合所として機能しています。ご高齢夫婦の店ですが、お二人の人柄でしょうか、町会行事後の慰労会、夜回り後の休憩などなど、結構な頻度で通常営業の夕方以降も人が集まっています。さらに、未だに出前もしているため、ご近所の高齢者宅への久しぶりの洋食弁当の宅配もしばしばです。昭和レトロな商店街にもこんなお店が残っているといいのですが...。
 私の身近ではこんな様子ですが、尾道市向島の脱獄犯捜索のニュースには、驚かされました。
脱走が起きたことより、人口2万人の島に空き家が1000軒以上で警察が容易に調べきれずに逃走犯の発見に至らないとは。尾道と言えば、しまなみ海道で観光などでもそれなりに有名でサイクリングで渡る自転車愛好家が多いと聞いていましたし、向島は橋、渡し船共に便の良い豊かな暮らしのできる場所と思っていましたが、大きな流れが超高齢化、人口減少ですので程良い豊かさを保つのが困難なことがみてとれます。しまなみ海道が渡る島々は本当に美しく、架橋による地域創生が期待でき、ある時期は成されたときもあったと思います。途中には日本画家の平山郁夫さんの生まれた島(生口島)があり、そこに立派な平山郁夫美術館もありますし、お隣には耕三寺と言う美術品を多く収蔵する浄土真宗の「母の寺」として有名なお寺もあり、ちょっとした観光スポットですが、残念ながら、観光客が押し寄せるような場所にはなっていません。
 さらに、このしまなみ海道に繋がる今治市も同様で、加計学園獣医学部誘致も地域創生の観点からすると悲願であったろうと想像します。15年間も愛媛県と今治市が若者招致と畜産業へのサポート強化を軸とした地域創生(振興)を目指し、政治の力を借りて実現して何が悪いのでしょうか。努力に報いて応援する政治家やその廻りの人達はそこから発生する利権やお金と関わっていなければ問題がないように思え、今、国会で言った言わないとして取り上げられている問題より、背後で利権と金の問題がないことを明らかにする議論に時間を振り向け、無駄な時間を使わないでもらいたいと思ったりもしています。今治市も今治タオルが名産品として有名ですが、若者の定着、畜産業含む一次産業維持などに課題も多く、1985年をピースに人口の減少傾向も止まらず、人口構成比も全国に比べ若者が少なく、高齢者の多い状況となっており、20歳前後が極端に少ないことから大学誘致は悲願であったことが容易に想像できます。政治家たるものこの辺りの事情も理解した議論をして頂きたいものです。
 地域創生、地域振興を簡単に目標に掲げて選挙戦が行われますが、日本全体を覆う難しい人口動態の悪化に抗って活力ある地域を作りだすことは、地域の魅力、働ける場所、家族観、故郷感などが重要ですが、働き方改革などの中で生まれ故郷にいてもクリエイティブである程度の報酬を確保できる仕事が活き活きできる仕組みを構築するグランドデザインが必要と思います。対症療法では乗り切れない大きな問題で避けては通れない道なのですから。

2018年04月17日

平昌オリンピックに思うこと

 二週間に渡って開催された平昌オリンピックが閉幕しました。日本選手団は、金✕4個、銀✕5個、銅✕4個の素晴らしい成績で過去最高のメダル獲得数を残してくれました。選手、スタッフなど関わってこられた皆さん、本当にお疲れさまでした。また、感動と勇気を本当にありがとうございました。ロシアのドーピング問題、北朝鮮の微笑み外交など、競技以外の話題もいくつか取り上げられましたが、終わってみれば、選手の皆さんの真摯に競技に臨む姿に引き込まれ、すっかり魅入られ、感動と勇気、そして元気を与えてもらった二週間でした。
 そんな中で、三つほど「これは気付かせてもらった」と言うことがありました。
 まず一つ目は、まもなく還暦の私たちの世代と違って、今の若者たちは「クールでカッコいいなぁ」と言うことです。私たちの世代は、”何だかんだと頑張ってます”と言うことをいっぱい外に出して結果にたどり着きました(たどり着ければまだいいのですが、笑)と言う自己表現が多いように思いますが、スノボの平野歩夢選手、フィギュアの宇野昌磨選手の競技以外での穏やかで自然体の姿や本番競技中でも変な緊張に支配されず動じない集中力は、「うわっ、今の若者はクールでカッコいいなぁ」と、すっかりファンになってしまいました。実力を出し切る際の訓練が平常心と近いところにしっかり創られていて、古くからの”熱くなる”のときっと違う燃え方を掴んでいるのでしょう。羨ましくもあります。
 二つ目は、ルールと見識と言うことです。大手新聞社やSNSが、女子フィギュアの順位結果から採点方法のことを取り上げていましたが、このことでとても重要な気付きをさせてもらいました。実は私は、日本好きで浅田真央さんを慕うメドベージェワ選手の大ファンで、銀メダルにとてもがっかりしていたひとりでした。しかし、わずか数時間後、あるテレビ番組の佐野稔さんの解説を聴いて”目から鱗”の気持ちになりました。佐野稔さんのコメントは、「過去に男子選手が前半に大技を集め、残りの後半をダラダラ滑って高得点を得たことの改善としてルール改定が行われ、通常、体力的に厳しく難度が同一ワザでも高くなる後半の点数を1.1倍としての是正を図った。だから、そのルール内で、後半まで滑り切れる体力、高まる失敗へのリスクを克服した演技は立派」とのものでした。私の頭の中に「見識」という言葉がその瞬間に浮かび、素直にザギトワ選手の金メダルを素晴らしいと思うことができました。競技解説の際中は、もっと若い方々の解説が楽しいと思っていましたが、過去の歴史、技術の進歩、ルールの変遷とそのバックグラウンドなどをしっかり知識として持ち、シュチュエーションに合わせて知識の引出しから正確に解説される様子は、まさにこれこそ見識で、ビジネスにおいてもとても重要な取組み方、考え方であると思ったものです。
 三つ目は、チームワークです。オリンピック競技は個人競技が多いのですが、今回はチーム競技の女子団体パシュートで金、女子カーリングで銅と団体競技で優秀な成績を観せてもらいました。パシュートの王者オランダを破った見事なチームワーク。冷静にラップを刻み最後の2周で逆転勝利を勝ち獲る様子は、息を呑み一部始終を観、最後に心地の良い歓喜を受取りました。個々の力に勝るオランダに勝つための緻密な戦術・戦略とそれを実現する努力に陸上男子400mリレーと似たものを感じました。しかし、個々も今オリンピックで追いつきましたね。個人種目でも、高木菜那選手は金メダリスト、高木美帆選手は銀メダリストですから。カーリングは、全く別の意味で、新しいチームワークのあり方を考えさせられました。明るいコミュニケーションとそこから導き出した合意の結論に対する協調の重要性を感じました。しばらくは「そだねー」男子(親父)になりそうです(笑)

 選手、スタッフ、バックアップ、運営の方々、本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。

2018年02月25日

時代は変わり、産業の米は...”蓄電池”

 1990年代、半導体が「産業の米」と言われた時代があり、この当時日本の電機メーカー各社は競ってDRAMの高集積化とそのための設備拡大へと歩んでいました。しかし、今では半導体で世界トップレベルにあるのは、東芝のフラッシュメモリ、ルネサスの車載用半導体くらいになり、メモリ関連ではサムソン、プロセッサではインテル、また、スマホ用ではARMアーキテクチャーのクアルコムがトップブランドとなっています。半導体がまだまだ産業を支えていくことには変わりはなさそうですが、次のIoT時代に向かってAIの浸透、ビッグデータ活用、家電・自動車の情報機器化などが進展すれば、GPU、量子コンピュータ、超小型通信機能内蔵統合チップなどがすでに汎用化したメモリやプロセッサから主役の座を奪っていくことになると思われます。
 そのような流れの中で、意外にも”蓄電池”が高度な製造技術を必要とするため、今後の「産業の米」となるかもしれません。ちょうど最近、製造業のイノベーターの雄である「テスラ」の苦境が報道されました。本格的な電気自動車の普及を狙う"Model 3"の量産体制が整わず、月産5000台の達成時期を再度2018年6月末に延期しました。このため、先行している量産設備投資負担が重荷となり、過去最大の4半期決算(2017年10~12月)を計上しました。その原因が電池の組立工程にあるようです。テスラの製造工程はAIを含む最先端技術で高度に自動化されていますが、それでも蓄電池の組立工程は一筋縄ではいかない難しさがあるようです。部品レベルで、電極、セパレータ、電解質の含浸相材料など最新のリチウムイオン電池は高密度化と安定性の向上が著しく向上していますが、発火事故防止などの安全性確保には非常に高い組立精度が必要とされます。さすがのテスラ(および最先端の自動組立ライン)でもここが壁となっているのです。
 電気自動車は内燃機関を持つガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車と比べて大幅に部品点数が減少するため、大きな市場規模を持つ製造業分野の中でも新規参入障壁が低いと言われ、中国などでも多くの新興企業が設立されているようですが、意外なところに高いハードルがあったと言うことでしょうか。現在、エネルギー密度が高く(蓄電量に対して電池重量が軽い)主流となっているリチウムイオン電池は、今でもしばしばスマホなどで発火事故を発生し、メーカーによる回収などの対処を強いられています。さらに、研究開発分野では、より安全性の高い蓄電池を目指して液体を全く使わない全固体電池などの開発もトライされているようです。半導体の高集積化競争とその進歩過程の様相は若干異なりますが、蓄電池でも革新的な技術の実用化により、モバイル関連機器、IoT機器、電気自動車などの基幹部品として、新しい時代の「産業の米」となっていくものと思われます。

2018年02月15日

新しい社会基盤生む環境

 最近、政府広報のTV-CMで「マイナンバーカード」による子育てワンストップサービスが頻繁に流れています。個人情報の保護や個人情報の国家統制などの心配を乗り越えて鳴り物入りで導入された「マイナンバーカード」がやっと利用者側の利便性向上を期待できる活用が始まりましたが、何ともスローペースの展開です。
 世界を見渡すとこのような社会インフラが素早く展開される例をいくつか見つけることができます。「マイナンバーカード」と同様の皆国民番号制では、クロアチアなどが非常に進んでおり、利用者の利便性向上(各種公的申請のインターネット化)はもちろんのこと、自治体行政窓口の業務効率の大幅向上(窓口業務人員削減として1/3~1/10)、保存文書等の激減などの効果を上げています。さらに、民間のスーパーマーケットのポイントなどまで個人カードで貯めることができるようです。また、中国都市部では、キャッシュレス化が劇的に進み、外出時には財布よりもスマホと言う環境が整ってきており、スマホによる決済の比率は何と98.3%(日本はたった6%)にも上ります。ポイントは、アリペイ、ウィーチャットペイの二大勢力が提供するモバイル決済で、QRコード+アプリと言うところが肝です。この方法では販売する店側がQRコードのみを用意すれば良く、高価な決済端末を持つ必要がありません。このため、露天の屋台のようなごく小規模な販売店も導入することが可能となります。合わせて、政府側は携帯電話をスマートフォンのみに絞るなどの社会基盤の統一で後押ししています。離島の搬送実験などで注目のドローンの実用実験、AI併用で劇的進化をみせている車の自動運転などは、シンガポールが都市内での実証実験を多く受け入れています。ドローンの規制を比較してみると、シンガポールでは7kg未満なら無許可で飛ばせますが、日本では安全性などの観点から200g以上のドローンは航空法の規制対象となっており、無許可で飛ばせるのはわずか200g未満の超小型ドローン(主としてホビー用)です。7kgの重量が可能であれば、ドローンにいろいろな機能を搭載して実証実験が可能となり、災害時の代用信号など各種活用が検討され、街の中で実験されています。
 日本は戦後75年となり、いろいろな社会基盤が老朽化しています。また、既存の基盤が整備されているため、規制や運営体制などが硬直化してなかなか新しいシステムが一気に普及することが難しいようです。前記の3例では、クロアチアは1990年に独立した新しい国、中国は中国共産党による一党指導体制の中央集権制、シンガポールは議会内閣制ですが実質人民行動党(PAP)一党による経済的繁栄を最優先する政治体制が維持されていることが、新しい社会基盤の急速な浸透の大きな要因となっていると思われます。中国、シンガポールの共通点は、必要と思われる社会基盤改革に国家が迅速かつ優先的に規制緩和や新たな規制改革を行える点です。特にシンガポールは政府機関が積極的に外資の都市型実証実験を受け入れる体制を整えており、外資の導入を促進し発展の大きな基礎を築いています。厳しい国家統制は困りますが、ちょっと羨ましい環境とも思えます。

2018年01月26日

企業統治・マネージメントと法令遵守

 大相撲でいろいろな不祥事が報道されていますが、人気スポーツ(?)のため、小さなことまでマスコミに大きく組織論のような論調で伝えています。しかし、最近の企業不祥事などを見ると、今までの日本式の組織運営システムが、「規則や契約が無くても、阿吽の呼吸で」では廻らなくなっていることを示しています。技術・権利、思惑・利害などが昔よりも複雑絡み合い、雇用環境も終身雇用が崩れて非正規雇用や委託業務による外部組織の活用による効率化が進み、従来は組織に留まっていた各種の情報、ノウハウ、知見を完全に組織内に守ることも困難となっています。
 組織体制は形だけは欧米並みにマネージメントと企業統治(コーポレートガバナンス)を分離する委員会等設置会社が増加し、法令遵守(コンプライアンス)の徹底も叫ばれています。また、不祥事調査やハラスメント対策では常設の危機管理委員会や外部調査委員会などが設置されていますが、組織体制の変化に比べて従業員との雇用契約は未だに古き良き高度経済成長時代の日本流のままです。ジョブ・ディスクリプションを明確にした個別の雇用契約を上級社員とは交わす必要が今後はより強まってくるのではないでしょうか。副業許可、同一労働同一賃金の新しい労使関係の時代に向けて、上級社員と企業間では、責任・業務範囲、情報・秘密の保持共有範囲、業務形態、報酬などをもっと細かく契約で約束する必要があると思われます。社則が企業・組織内の憲法とすれば、この個別契約がコーポレートガバナンス・マネージメント、コンプライアンスの法律(社則を補う細則)となるでしょう。
 大相撲関係の報道の中で、「大相撲は、興業か?、スポーツか?、相撲道か?」などの議論や意見がいろいろ交わされていますが、たぶん公益財団法人日本相撲協会にとっては「興業」、親方の根本の指導理念は「相撲道」、力士は「スポーツ」と言うのが近いところではないでしょうか。しかし、だからといって大相撲の組織に対するガバナンスやコンプライアンスが徹底できないのはおかしなことで、力士と相撲部屋の関係が古い徒弟制度のような形で運営され、日本相撲協会が相撲部屋を個人商店と見立てて束ねた商店街のような寄り合い所帯のユルい組織に見えてしまいます。力士、親方、役員などの階層毎に内容の異なる契約をきちんし、その役割が異なることを明確にするような方法も改革の一案ではないかと思います。
 その分野におられる方からするとお門違いかもしれませんが、日本カヌー連盟で起こった薬物混入の不祥事も日本的な信頼関係に期待した甘い組織や競技会運営が事件を防げなかった一因と思えます。欧米は多民族国家が多いため、日本より厳しい契約社会になっていると思われがちですが、世代間や業種、地域などで価値観が多様化している今、コーポレートガバナンス、マネージメントやコンプライアンスをきちんと徹底するには、個別の雇用契約をもっと重視することも必要ではないでしょうか。

2018年01月24日

仮想通貨の将来は?

 2017年12月17日に220万円超の最高値を付けたビットコイン(Bitcoin)がたった1ヶ月後の2018年1月18日には半額の110万円を切る暴落となりました。2017年は年初から約20倍と暴騰していましたが、世界各国で規制強化の方針が示されたのをきっかけに一気に下がったようです。
 世界の取引高の中で円建て取引が4割を超え、また、20~30代の若い人達がこの投機的な市場に多く参加していたようです。加えてFXと同じように証拠金取引がすでに行われていて、10倍程度から最大25倍ものレバレッジ取引が可能だったことを考えると、強制ロスカットによる大きな損失を被った人達も多かったのではないかと心配されます。ビットコインの下落に伴い、イーサリアム、リップルなどの他の仮想通貨も大きく下げました。
 改めて仮想通貨の価値は何だったのだろうと考えさせられます。通貨の歴史を考えるとその価値は、物々交換の価値の基準として発明され、古くは貴金属によって担保され、その後、国家などが保証する形となり、変動相場が導入されたことにより流通量と需給によって交換価値が変動すると言う要因が付加されました。しかし、仮想通貨は通貨としての機能がやっと公式に認められてきたもののその価値は、ものやサービスとの交換価値ではなく、もっぱら需給、つまりは人気と期待の大きさを裏付けとして欲しい人と手に入る通貨量のバランスによってその価値が決まり、従来の通貨を仲立ち(交換できることを前提)として仮想通貨市場が形作られたと言う感じでしょうか。仮想通貨は通貨ではありますが、所有者および利用者の意図(欲しい、持ちたい意識)によってその価値が存在するものです。決済手数料がほぼ無料、インターネット上で即時決済が可能、匿名性が確保された支払と資金移動が可能などのメリットが従来の通貨に対する優位性、先進性として人々に大きな期待を与えたことが、人気を博している根本的な要因です。また、基盤技術であるブロックチェーン(分散型台帳技術)は今後のフィンテック(FinTech)など金融分野で注目される大変重要な技術です。ただし、マネーローンダリング、ブラックマーケットでの決済、脱税などに利用される可能性が高いと言うデメリットも現状では避けられず、これが世界各国で規制が検討される理由です。
 しかし、日本のATM網を維持するための2兆円もの費用が掛かっているなど現在の金融システム維持には莫大な継続的費用が発生しとても非効率があることも明かとなってきていますし、ますます進むグローバル化などを考えるとキャッシュレス化、通貨間の両替不要な決済、インターネットによる手数料不要の即時決済などは不可欠で、近未来には、それらの用途の一部はデメリットを克服した仮想通貨が担うときが訪れるのではないかと思います。

2018年01月21日

2018年は希望の年に!!!

 2017年、日本株大納会は26年振りの高値、2万2764円で取引を終え、完全失業率は事実上の完全雇用を示す3%を割込み、厚生労働省が12月26日に発表した11月の有効求人倍率は1.56倍と43年10カ月ぶりの高水準となり、すでにバブル期の水準を上回り、高度経済成長期並みの求人難となっています。その上、企業の内部留保は400兆円に迫る状況です。
 先進各国の金融緩和やアベノミクスが経済を下支えをしながら、IT活用の新しい事業形態などが革新的なビジネス・モデルを構築し生活の中に浸透しています。これらにより、着実に景気は上向き、企業収益も回復していることを数字が裏付けています。残念ながら、なかなか好景気の実感が伝わってこないのはやはり賃金上昇が伴っていないためでしょうか。特に昨今の非正規労働者比率増加に伴い、期間業績給である賞与(ボーナス)が支給されない方々が相対的に多くなっていることも一要因と思われます。
 しかし、今後はいよいよ企業が人材確保などのために賃金、労働環境、働き方の向上および改革に取組まないといけない時が訪れました。AIなど最先端技術で労働力不足を補う方針を示す企業も目立ってきましたが、AIは「1→100」、人は「0→100」と言われるとおり、ビジネスを0から作りだすのはやはり人の仕事です。ロボットやAIにできる仕事はどんどん任せて、人がよりクリエイティブな仕事へ、また新しい仕事を創り出すことへ....、2018年がそのスタートとなる希望の年であることを祈っています。
 加えて、不正企業の苦しい言い訳で一部人手不足(?)が要因とされた素材業界の検査データ不正、自動車業界の完成車の無資格者による検査などの一流企業の品質不良問題は、日本の産業全体の信頼を揺るがす残念な出来事でしたが、ロボットやAIなどの新たな技術がこのような問題の解決・撲滅に活用されていくものと期待します。

2017年12月31日

新たなゴールド・ラッシュ?

 仮想通貨やネットを用いた新しい職業や業種が本格的に社会に浸透し出してきました。まさに、IT技術をベースにした新たなゴールド・ラッシュの様相です。
 代表的な仮想通貨のビットコインは今年1年間で20倍に高騰し先物市場も開設されましたが、数回に渡る分裂、たった1日で39%の下落などまだまだ不安定な状況も見え隠れしています。ベンチャー企業が資金調達で多く用いるようになったICO(Initial Coin Offering)も一種の仮想通貨のようなものです。共に従来の通貨が国家や国家共同体がその価値を担保するのに対し、ユーザーの期待と需要、根幹にあるIT技術がその価値を支えている点がユニークです。技術の中では特に、「ブロックチェーン(公開分散元帳)」が金融取引などに重要な要素技術として注目されています。しかし、ユーザーの気持ちの移ろい易さ、スーパーコンピュータや量子コンピュータの進歩によりマイニング(採掘)が高速化され仮想通貨の流通量が莫大に増加した場合などのリスクが心配されます。
 また、インターネット、ITを活用して個人と個人がSNS、マッチング・サイトなどで容易に繋がることが可能となり、個人が意外な報酬を得られるようになってきました。少し古くはブロガー、今人気のYouTuber、最先端は17ライバーなど、ファンの視聴数による広告収入が主流と思っていたら、ファンの「投げ銭」が直接報酬(正確には投げ銭の50%が17ライバー、残りは運営側にようですが...)になるとは驚きです。ネットの世界でのストリート・パフォーマーですね。かなりグレーな「転売ヤー」などと言うのも出てきましたが、これは名称は今風ですが、昔の「ダフ屋」の電子版なので新しい職業とは言えませんね。
 社会保険などでは世代間格差で高齢者に厚いと言われますが、このようなネット・パフォーマーのような職業や報酬の得方は、若い方々が甚だ有利な逆世代間格差だなぁと思うのは年寄りのひがみかもしれません。

2017年12月30日

スパコン有力ベンチャーで不正

 ベンチャー企業の資金調達が困難な日本で、事業内容、技術力、将来性などが非常に有望視されていたベンチャー企業で不正が行われました。とても残念です。
 AI・人工知能時代に向け省エネ型スパコンを液浸方式と言うユニークな方法などで実現したペジー・コンピューティング(PEZY Computing)の社長が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金詐欺を働いたというものです。多額な費用を要するスパコン開発で資金調達にベンチャー・キャピタル(VC)を使わず、主にNEDOの助成金や科学技術振興機構(JST)による融資など公的資金を用いていたとは、詐欺の事実よりむしろそのことに先ずは大変驚きました。さらに、NEDOから数億円規模の複数の助成金を認められていたことも重ねて驚きでした。また、民主党政権時代の事業仕分けで「一番じゃなきゃダメなんですか?」と蓮舫議員が言ったことも思い出しました。15年ほど前のサラリーマン時代にかなり大型の新規装置開発の際、親会社の研究所が要素技術開発と初期の試作装置を製作するため、やはりNEDOからの助成金の助けを得ましたが、3年間で数千万円程度であったと記憶しています。国の推進する重要な科学技術関連事業とは言え、1社に数億円のプロジェクト複数とは...。こうなると本当は交付側の選考基準、実行管理・成果報告方法などもどうなっているのか少し疑問が湧いてきます。国立の大学、研究所などが独立行政法人となり経営の効率化は進んだようですが、事業収益性が不透明で開発が長期に及ぶとしても進めるべき大きな開発テーマや基礎研究の受け皿、組織設立、人材確保などが段々難しくなり、外部や民間への助成金・補助金の交付の形が増えているのかもしれません。
 PEZY Computing は、今後のAI・人工知能の発展・普及による大幅な電力逼迫を予想し省エネ型スパコン開発を目指したベンチャー企業で、2017年の世界スパコンランキングの演算性能ランキング「TOP500」でExaScalerとPEZY Computingが共同開発した「暁光」が4位、消費電力性能部門「Green500」において同様の2社が共同開発した「菖蒲」が1位を獲得しています。着実に成果も出している企業ですので、今回の事件をきちんと償い正しい方法で世界トップレベルのスパコン開発を継続してもらいたいと思いますが...。

2017年12月13日

資金調達に新潮流?

 ベンチャー企業の資金調達は、主にベンチャーキャピタル(以下、VC)に頼る時代からクラウド・ファンディングが加わり新しい面白い方法が現れたと思っていたら、またまたイニシャル・コイン・オファリング(ICO)と言う新手が現れ、何とVCからの2倍以上の資金がこの方法で調達されているようです。
 何でも、開発が上手くいった暁に開発予定のソリューションあるいは物(以下、開発予定製品)を使える権利を与える約束で資金調達すると言うことらしく、この権利の約束をトークンと称して販売するそうです。ただし、トークンの定義はホワイト・ペーパーと言われるベンチャー企業のパンフレットにあたるもので示され、通常の投資、例えば新株購入権などとは全く異なり、事業価値そのものを先取りして販売・購入すると言う感覚で、商品を先行販売する形態に近いため、未だ投資や金融取引としての法規制がありません。ベンチャー企業では会社自体よりその開発予定製品に期待される価値があるので、まだ形となっていない開発予定品を先取りしてトークンとして商品化する訳です。クラウド・ファンディングでも目標金額まで資金が集められれば、表示した開発予定製品やイベント参加権などを実際に手に入れられることと似ています。しかし、大きな違いは、投資する側がその資金を仮想通貨で支払うことにあり、クレジットカード情報などを提供せずに安全に支払とトークン入手が完了するため、投資に対する心理的障壁が大きく下げられていると思われます。
 先日(11/25)、またビットコインの分裂が伝えられ、仮想通貨自体の価値の安定や普遍性が危惧される面もある中、時代の先駆者の間ではある種のブームとなっているようです。投資する側もトークンの値上りを期待できること、仮想通貨による手軽で安全な投資であることに加え、先進的な投資方法であることがとても魅力的に映るのでしょう。
 しかし、資金調達する側はVCからより、ずいぶんと楽に大金を集めているようで、規制のほとんどない錬金術の危うさを感じざるを得ません。ベンチャー企業の起業家がVCの厳しい課題(製品開発、知財、販売、競合、資金計画など)に答え、乗り越えるうちに事業の持続可能な必要条件を整える場合も多いと思われ、安直な資金獲得はスタートアップ時点での準備、知恵、戦略不足などを招き、資金面ではロケットスタートでありながら、肝心の事業面の計画完成度は些か怪しいのではと心配するのは余計なお世話なのでしょうか?

2017年11月28日

SNSでも想定外の参加者が...

 SNSが個人のコミュニケーションと情報収集の重要なツールとして欠かせなくなり、パーソナルな活用を越えて、有名人や企業の活動の発表や報告、広告や認知度向上などにも盛んに用いられています。ファッション、グルメなどの業界では非常に重要な宣伝・販促ツールとなり、ホームページなどよりむしろ影響力の大きい存在となってきています。
 しかし、ツールとしての威力が増すと、当然、想定外の悪意の参加者も紛れこんできます。米大統領選でトランプ陣営がロシアと共謀しFacebookを利用して、クリントン陣営を不利に追い込んだ疑惑が捜査されています。米大統領選で他陣営を不利に追い込むために他国の協力(共謀)を得て、さらに、SNSの中にまで展開するとは、違法の可能性が高いとは言え、最先端の民心掌握法に驚くばかりです。通常の商用目的でも、好評価の意図的な創作や有名人の知名度を利用した認知度向上などが横行し、消費心理が少なからず誘導されています。情報の見極めがとても難しいと感じますが、各種の情報がいろいろな方法で入手できるようになった現在、やはり複合的な情報確認が最低限必要と思います。
 また、座間市ではとても悲しい事件が見つかりました。Twitterが被害者を呼び寄せるために用いられてしまったようです。個人が自分の気持ちを不特性多数の人に呼びかけ、共感を感じた仲間が集まれると言う特性が、蟻地獄のような悪意の中へ辛い気持ちを持つ人達を吸い込んでしまったことは衝撃的です。世代を問わず孤独化が進む社会の中で、SNSは貴重なコミュニケーションの場であることは言うまでもありませんが、リアルに見る、聞く、感じることが物事の真実を見極める重要な情報を与えてくれることを忘れてはいけない、また、速い時代の流れや世の中の動きに惑わされず結論を急がないことも”とき”には必要と思います。
 当然ながら、SNSの事業者が利用者の安全のための対策を施すことはもちろんですが、自由に誰もが交流ができる貴重な環境であるSNSを悪意の参加者のために規制で雁字搦めにしてしまうことも残念です。理想を言えば、SNSの安全と秩序は参加者相互の協力で確保されるのが、新しいコミュニティーとして望ましいと思いますが、とても難しい問題です。

2017年11月06日

日本人の好きなもの

 大荒れの衆議院選挙も終わり、臨時国会もはじまりましたが、今回の選挙で日本人の好きなもの嫌いなものの一端が見えたような気がしました。
 自民党の対抗勢力として野党が、思い切った戦略で一気にまとまる機運を見せたものの、わずか数週間のいくつかの出来事で逆の結果となってしまいました。
 希望の党の正式結党直前、民進党の大英断までは、「勇気」と「団結」、「改革」に多くの人々が好感を持ち、期待したものですが、結党時の「リセット」の一言に「えっ」と最初の違和感を感じた人は多いのではないでしょうか。強大な敵に戦いを挑んだ盟友が進めていた困難な準備作業をリセットと...。そして、マスコミがこの一言でと言う「排除」発言へと。しかし、これはあまりにもマスコミが騒ぎ過ぎで、一人の記者の質問がこの言葉を引き出し、選挙の流れを大きく変えたことをマスコミ全体が報道の成果としたいとの気持ちがありありです。しかし、「リセット」と「排除」、この二つの言葉が、希望の党を大きな敵(自民党)に立ち向かう挑戦者から一気に野党再編のドンに変えてしまい、残念ながら日本人が好きな「挑戦者」から転げ落ちてしまったことには間違いありません。
 その後は、「ブレない」「靡(なび)かない」の二つの日本人が大好きなキーワードで、立憲民主党が野党第一党に躍進したのは、ご存知のとおりです。直前の騒動が、より鮮やかな対比として「ブレない」「靡(なび)かない」を輝かせたと思います。また、この一連の行動に「男気」「潔さ」なども感じられ、応援したい気持ちが突き動かされました。
 何でもハラスメントと言われる時代となり、ミスや倫理観に厳しい不寛容な社会を感じることが多くなっていますが、今回の選挙の結果をみる限りでは、まだまだ日本人の好き嫌いの価値観は大きく変化しておらず、昔ながらの「判官贔屓」のような気質は残っていると感じたのは私だけでしょうか。
 ともあれ、若い人達がかなりの割合で、より現実的に雇用の回復を実現した安倍政権を支持して自民党に投票したとのこと。やはり叙情的な感情だけで投票行動は決まりませんね。7~8年前、娘が就職活動で大変苦労したことを思い出しました。

2017年11月05日

日本の大企業が次々と...

 日本の名門と言われた大企業から次々と組織ぐるみの不正が明らかになっています。神戸製鋼所が10年以上の長期間に渡り製品のデータを偽って出荷を続けていたり、日産自動車で無資格者の完成車検査が行われ、なおかつ、不正の是正宣言後も改善されていなかったり、日本品質は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。少し前には、東芝の不正会計問題もあり、未だに存亡の危機を乗り切れるかどうかの瀬戸際にあります。日産自動車の問題はリコールで収斂すると予想しますが、神戸製鋼所の存続は単独では困難なように思えます。
 いずれにしても、内部で不正を正すことができず、経営者の業績や生産に対する号令(圧力)に屈して不正に走ってしまった結果です。新聞や雑誌の記事などで日本企業に共通した悪弊などと言う言葉が出てきています。海外に比してサラリーマン経営者が率いる大企業が多い日本では、経営者の保身から出てきた上司の不条理な命令に逆らえない傾向が強いと言うものです。ある面では納得の分析で、日本では上司の業績向上に貢献した部下が引き上げられる連鎖が出世の大道なのですから。しかし、バブル崩壊、リーマン・ショックによる長期の不況で業績に貢献する方法が”新事業を興す”、”良い製品・サービスを創る”、”市場を開拓する”などの前向きな貢献から、多少の誤魔化しでも業績数字面(ヅラ)を整える後向きの「貢献とは言えない作業」が増えていったように思います。
 とても意地悪な言い方をすれば、今の経営層はこの「貢献とは言えない作業」を上手にこなして昇り詰めたスペシャリストなのです。とは言え、多くの方々は、時代の移り変わりによるコンプライアンスやガバナンスの重要性拡大を逐次取り入れ、現代版の清廉な経営を構築されていると思いますが...。
 少子高齢化などによる労働力減少、働き方改革など経営環境がより一層厳しくなる中、新しい工夫を取り入れながら、日本型経営の新しいモデルが生み出される時期ではないかと思いますが、やはり日本品質は製品においても、また、サービスにおいても最重要で新興国の高度化に負けない肝(キモ)と考えます。"MADE IN JAPAN"、"おもてなし"の価値は継承していきたいものです。

2017年10月20日

ころころ変わるキャッチフレーズと「人生100年時代構想会議」発足

 働き方改革の次は「人づくり革命」そして有識者会議「人生100年時代構想会議」が新たにスタートします。"女性が輝く社会"→"一億総活躍社会"→"働き方改革"→"人づくり革命"と政府のスローガン、キャッチフレーズは変化していますが、いったいその成果は何なのでしょうか?"人生100年時代"は本当に日本にとって避けられない重大問題ですので、明るい方向性、例えそれが多少の忍耐や国民負担を必要とするものであっても、を示してほしいものです。
 "働き方改革"は労働環境改善の動きが企業側から予想外に広がり、社会構造の変化に向けた大きな動きが進んでいるように思えます。しかし、その推進力は、労働人口の減少と深刻な人手不足、ブラック企業告発圧力増大など、ネガティブ・ファクターにより生み出されており、崇高な理想や先進の知恵に牽引されているのではないのは少し残念な気持ちです。"人づくり革命"はその視点からすると大きな流れを作れずに萎んで行きそうですが...
 "働き方改革"の手法でテレワークが有効な手段として総務省なども後押しをしていますが、私の世代は「24時間働けます」+「何処でも」のイメージが浮かんでしまいますし、有名女性経営者がテレワーク一押しとのお話をする度、"スマートさ"より、古い言葉ですが"モーレツさ"を感じてしまいます、若い方々の受取り方は違うのかもしれませんが。個人的には、"ノマド・ワーク"と言う言葉が好きで、遊牧の民の自由で広々したイメージとゆったりの中の生きるための自己責任感みたいな感じがいいなぁと思い、オフィス外での仕事に出掛けるときに、勝手に「ノマド・ワークしてきま〜す」などと掛け声をオフィスに残して出発しています。
 様々な取り組み方で動き出した"働き方改革"は時代に合わせて、人、業種、業務などの多様性をしっかり包含しながら、働き手の活力向上(公私共に)が実現できるシステムとして定着することを期待しています。

2017年09月23日

シェアリング・エコノミーの難所

 大きなビジネスチャンスを生み出すシェアリング・エコノミーですが、大きくなる際にいくつかの難所があるようです。
 一番の難所は既存勢力や規制との戦いです。米国から始まり世界70ヶ国、450都市以上で普及しているUber(配車アプリ)ですが、日本では未認可の旅客運送行為は白タク行為として取締りの対象ですし、香港でも既得権益のタクシー営業権との対立で普及が妨げられています。本来、余剰の自家用自動車の運送力をアプリを用いたマッチング・ビジネスで安価で利用し易い、あるいは利用しにくい場所でも利用できる利便性を構築するものでしたが、Uberドライバーを生業(職業)とする人々も多く生まれ、ビジネス・モデルは大きく進化(変化?)しています。民泊にも同じような現象が現れ、余剰施設の共有のレベルから新しい宿泊施設ビジネス「民泊」へと変化しています。
 第二の難所は、想定外の悪意の利用者の参加です。Uberドライバーの中には善良でないドライバーも紛れ込むようになり、運営サイドはドライバー審査強化などに取組んでいますが、急速な拡大になかなか追いついていないようです。また、ビジネス拡大と共にUberドライバー側の収入減少などの不満も増大し善良なドライバーの確保自体も課題が多いようです。民泊では、宿泊者のチェック機能の甘さが悪意の利用者に突かれ、何と犯罪(振り込め詐欺など)のアジトとして用いられる場合も出てきました。善意の利用者だけならば、安価かつ便利に加え、新しい出会いのような楽しみも提供してくれるシェアリング・エコノミーですが...。新しいビジネスですので、完成形まで幾多の改良の余地があると思いますので、工夫を加えて当初の既存システムとの優位性を保ちつつ、安価、安全・安心を実現してほしいものです。
 個人と個人を繋ぐモデルですので、利用する側は事前のコミュニケーション、評価サイト確認などによるセルフ・チェック、運営側は想定外が安全・安心と社会的規範を脅かさないような管理体制を利用者拡大のスピードに遅れないように構築していくことが重要と思われます。
 そう言えば、フリマアプリで現金を額面以上の金額で売るなどということも今年起きていましたね。ニュービジネスでは過去のモデルがないので、想定外が現れる可能性が高く予見しにくいのが事実ですが、マイナス要因だけでなく事業拡大にプラスの想定外もあるのが面白いところなのでしょう。

2017年08月13日

ポスト炭素繊維になれるか? CNF(セルロースナノファイバー)!!

 二日続けて、CNF(セルロースナノファイバー)が日経新聞で取り上げられています。昨年(2016年)12月に東京ビッグサイトで国際フォーラムが開催され、展示会も小規模ながら開催されましたが、いよいよ本格的な実用に向けた動きが加速するのでしょうか?
 記事の内容ですが、7/18記事では、”「ポスト炭素繊維」30年に1兆円市場へ、量産元年”のタイトルで日本製紙が石巻工場で完成したCNF量産設備をお披露目したことを、7/19記事では、”素材にも破壊的イノベーション 金属より強い複合樹脂”のタイトルで新素材を紹介する中、サブタイトル「CNF強化樹脂 コスト10分の1」で古河電工が製造コストを大幅に下げる新技術で鉄より軽く強度も強い特性を活かし自動車の次世代材料へ参入することを伝えるものでした。
 CNFは、紙の原料であるパルプを物理的や化学的追加処理を用いて長さ数ミクロン、太さ数十nmオーダーにより小さくしたもので、軽量、高強度、循環可能(環境負荷が低い)な素材であることから、炭素繊維に変わる複合材料(強化材)として注目されていましたが、製造コストがなかなか下がらず普及が加速されませんでした。今回の二つの記事は、CNF開発のトップランナーのひとつである日本製紙がいよいよ量産を始め普及を本格的に進める、異業種(パルプ、製紙業界以外)が製造コストの壁を打破する新技術で新規参入する の二つが結構衝撃的でした。昨年の12月の段階では製造コストに見合う用途開発がなかなか難しいとの印象でしたが、実際の量産設備稼働、異業種によるコスト破壊を呼び水にして大幅なコスト低減が実現されれば、一気に用途が広がる可能性も高まります。
 しかし、異業種の古河電工が低コスト製造の新技術で参入するとは、紙の次の「脱製紙」を目指していた製紙業界としては「エッ」という感じでしょうか。いずれにしても、最大の課題であった製造コストに楔を入れる古河電工の参入で、更なる技術革新が生まれ、同時に用途拡大、普及促進が進むと期待されます。

 なお、国際フォーラム開催時のCNFは、学術的にナノセルロースと呼称されていましたが、どうも世間的にはCNF(セルロースナノファイバー)で統一されるようですね。CNFは軽量、高強度以外にも炭素繊維にない特性があり、コストの壁が打破できるとその用途の広がりはとても楽しみです。新用途が期待できる特性は、ファイバー自体が柔軟(柔らかい)、表面が親水性である、表面改質や修飾をし易い などです。

2017年07月23日

人事が会社の花形?!

 少子高齢化による労働力不足、待ったなしの働き方改革が社会から要求される時代、企業内での人事部門の重要性が嘗てないほど高まっているように感じます。
 優秀な人材を逃さない、見つけて採用する、人材を育成する、従来の日本型雇用体系を変革する、働き方改革への対応など、正に会社が時代の流れの中で姿を変えなければならない今、人事部門がそのの中心です。もちろんビジネス・モデルの寿命も短くなり、顧客の志向変化も激しく、事業戦略・展開なども難しい時代となっていることはもちろんですが。企業向けの展示会やイベントでヒューマン・リソース(HR)がメインテーマやサブテーマとしてこれほど踊るときが来るとは予想もしていませんでした。
 ブラック企業にならないと言う最低のレベルから新しい働き方を提案するニュータイプの企業まで、人事制度、雇用制度・契約の多様化は一気に進み、企業の人事部門は柔軟かつ大胆で社員の高いモチベーションを誘発できるアイディアを求められています。現場での教育・育成、職場雰囲気の醸成などのレベルでは全く追いつかない人材育成・確保法の地殻変動ですね。経営トップを”説き伏せても”くらいの情熱が必要な仕事になったように思います。

 日経BP総研 イノベーションICT研究所主催の働き方イノベーションForum 2017のレビューがITproのサイトに掲載されています。ご興味のある方は、リンクからご覧下さい。

2017年07月20日

休み方改革、働かせ方改革???

 働き方改革がほぼ毎日話題となり、働き方改革は働かせ方改革ではとの企業側からの見方がでてきたりしていますが、先ずはしっかり休みましょうと休み方改革という言葉をよく見かけるようになりました。労働力減少に伴う労働力不足や逼迫の時代となり、人材確保のひとつの方策として「きちんと休める会社」は重要な魅力のひとつとなっていくものと思われます。
 2017年7月10日の日経新聞電子版に”「休み方改革」職場一斉に 人材確保へ有休促す”との記事がありました。導入企業は労働時間抑制と勤務形態やシフトの改善、顧客サービスの維持・向上に知恵を絞りながら各種の工夫を加えて、働き方改革を同時進行で進めていくものと思います。政府の掛け声よりも企業の”人材確保”が改革の原動力となって大きな動きが進み出したことは非常に良いことと思われます。
 しかし、気になる記事も...。労働力減少社会の中、人生100年時代となり、働く必要があり期待される労働力でもあるシニアがちょっと問題ありのようです。経験等をうまく活かして組織で上手に活躍してくれればいいのですが、(1)勘違い、(2)評論家、(3)会社依存、(4)現状固執、(5)割り切り など、会社が困るタイプに陥る場合も多いようです。若い人達とうまく連携・協力して相乗効果の発揮できる仕事の仕方を見つける努力を継続していきたいものです。

2017年07月12日

第1回AI・人工知能 EXPO

 2017年6月30日、東京ビックサイトで開催中の第1回AI・人工知能 EXPOに行ってきました。100社ほどの出展社に対してもの凄い多数の来場者で通勤電車の如くの満員御礼で、AI・人工知能に対する関心の高さを示していました。このため、丁寧に出展社にヒアリングなどをしながら調査することはまったく不可能で、通路をゆっくり流れる人の波に乗りながら展示パネルなどから情報収集するのが精一杯という状態でした。主催のリード エグジビション ジャパン殿には次回は通路を広げるなど工夫をお願いしたいものです。
 しかし、思いの外の点をいくつか気付くことができました。第一には、出展企業が従来の電子・電機の大手企業やその関連会社ではなく、新しい企業が多いこと、第二に、すでに実用分野が身近に広がっていることです。実用分野は、文字、音声、画像認識を実装してさらにその先にディープ・ラーニングなどを用いて、チャット、問合せ、コールセンタでの対話、在庫棚の監視・管理、統合的な流通管理へとシステム化が進んでいます。
 展示会での製品紹介ですので、身近に迫った実用分野の紹介が多く展示されていたものと思いますが、AI・人工知能は人手でコツコツと行う入力業務を音声や画像認識を代替したり、大量データ収集と解析を大幅に自動化し足りした上に、さらに判断のサポートや自動判断を実現します。労働力逼迫の時代にこの特性がうまく活かされ、人と共存共栄の技術して発展していくことを期待します。映画バイオハザードのアンブレラ社のように人工知能に支配される未来は、映画の中で。AIの活用により将棋の藤井聡太さんのような天才が生まれるのは大歓迎ですが...。

2017年07月03日

働き方改革と企業の競争力強化

 2017年6月28日、日経BP社主催のHuman Capital 2017の基調講演「日経Smart Work」プロジェクトスタート宣言パネルディスカッション「働き方改革と企業の競争力強化」を聴講してきました。パネラーは、BTジャパン社長の吉田晴乃氏、経産省産業人材政策室参事官の伊藤禎則氏、慶応大学大学院教授の鶴光太郎氏の3名、モデレーターは日経新聞の瀬能繁氏で、(1)どのような働き方改革が企業競争力を向上するか?、(2)具体的な取組みは? などをテーマに約70分のパネルディスカッションが行われました。
 BTジャパン社長の吉田さんは、経団連初の女性審議委員会副議長等の肩書を持つウーマノミクスのパイオニアとして、特に女性の働く環境、働き方に関して、社内での実践を含め多くの具体的な提案を示し、特にテレワークの有効性を強調されていました。その中で、今の経営者は個人に残されている10分、10分・・・・を集めて力(大きな労働力)とすることが仕事、これが生産性革命に繋がると言っていたことがとても印象に残りました。ICT活用による生産効率向上などとよく言われますが、根源は働く人達の時間を如何に効率良く結集できるかなので、10分、10分を集めると言う考え方にとても共感を覚えました。
 経産省参事官の伊藤さんは、現状の働き方改革実現会議の提言が長時間労働の是正で初めて罰則付時間制限を決定し、今後の一億総活躍社会実現に向け、時間、場所、契約などに縛られない柔軟かつ多様な働き方の実現を目指すとの政府方針を示されました。また、今後は働き方だけでなく人材つくり革命をキーワードに個別最適ではなくトータルパッケージで雇用制度、教育・人材育成、社会保障などを連動した対応が必要と。政府としては、働き方改革が働き手と企業が相反しないように導きたいとのことでしたが、働き方改革が、働かせ方改革や働かない改革にならないよう祈りたいですね。
 慶大教授の鶴先生は、今後、日本の働き方がメンバーシップ型や無限定正社員システムからの脱却し、時間当たりの生産性向上を目指す時間や場所などを選ばない働き方へと変わっていく場合、人事評価制度の大幅な改革(人事改革)と働き方改革を両輪で進めることが重要で、従来の評価よりはるかに変数の多い複雑な評価方法(先生は多変数連立方程式になると仰っていました)が必要となるとの企業の人事部門の方々には少々厳しいお話しでした。
 パネルディスカッションの最後に、一般的に働き方改革はトップダウンでと言う方の多い中、吉田さんが「現代のトップは企業リスク管理・対策・対応で忙しいので、働き方改革は現場から(中間管理職から)」と言われたのはちょっとした驚きでした。外資系企業故でしょうか?

 講演後、Human Capital 2017の展示会場で総務省のブースに伺い、政府での働き方改革は、総務省、経産省、厚労省、国交省の4省が連携して取組んでいると伺いました。総務省、国交省は見落としていたので、今後は注意を払っていきたいと思います。

2017年07月01日

宅配クライシス

  宅配クライシスなどという言葉が新聞でも踊りだしました。インターネット通販による宅配荷物の急増に対して、流通・運送業界は効率化による対応が追いつかず、加えて労働力の逼迫、人件費の上昇、社会的・倫理的要求の強い労働条件の改善に苦慮しています。
 そんな中、Amazonは日本で独自配送網の構築をスタートし、大手流通企業への委託を中小への直接委託、さらには個人の活用も視野に入れた取組みを目指しています。欧米のAmazonではすでに一部の地域で学生などを運び手とした個別配送のシェアリング・エコノミーが実現しているようです。ドローンでの直接配送の実験といい、技術、ビジネス・モデルの両面から小売り、流通を革命的に変えていくAmazonの知恵とパワーに感心します。
 しかし、最近のニュー・ビジネスが想定外のことで不都合を招く例が多く、流通・運送においては荷物の紛失、破損、運搬中の事故、宅配先でのトラブルなどが心配されます。Amazon、Uber、メルカリなど、ニュー・ビジネスにおいては想定外の参加者により事業者の予想を超える事態で急成長後の躓きを経験しているようです。多くは善良でない参加者と事業者側の対応の受け皿の不備とマンパワー不足が問題のようですが….
 日本では佐川急便が宅配メイトと言う形で新しい労働力確保に取り組んでいます。集配拠点や営業所から数㎞範囲の最後の配達を自転車などで主婦、学生などが1日3〜5時間の時短勤務など自由度の高い就労時間で仕事ができると言うものです。飲食、小売りなどのパート勤務よりさらに自由度の高い勤務体系です。これも「働き方改革」ですね。ただし、報酬単価が低いのが気になります。
 他の新しい働き方の提案も多くの場合、不足する労働力の確保と共に安価な労働力の調達が目的とされていることが懸念されます。余った時間で稼げるというようなイメージは働く側、雇う側ともに変えていき、自由度の高い働き方でも労働力の提供として、正当な対価で評価されるようになることが必要と思います。ますます働き手が不足する時代になっていくのですから。

2017年06月25日

オートファジーに関する研究の展望

 2017年6月10日、IIRS(*1)主催の第13回IIRSセミナーに参加してきました。京都大学阪井康能先生(*2)による「オートファジーに関する研究の展望」と言う講演でしたが、研究者向けのため、かなり専門的な内容で、難しい!!でした。
 ”オートファジー”はご存じの通り、2016年ノーベル医学生理学賞を大隅良典東京工業大学栄誉教授が受賞された研究テーマ(*3)です。ざっくり言えば、細胞内のリサイクル機能で細胞内のタンパク質を分解して生命維持に必要なアミノ酸生成に用いるなど、生命活動を支える重要な機能です。この仕組みの解明が、がんなどの病気の研究に発展した功績でノーベル賞を授与されたとのことです。
 さて、本題の講演ですが、大隅良典先生の研究初期では培養によって変異株を単離し、オートファジーボディが蓄積することの発見などを端緒として研究を進められたようですが、現在の研究では、ミュータント(*4)を用いることにより分子生物学的な解明が加速されているとのことです。大隅良典先生らが見付けたAgt遺伝子(Agt分子)に加え、もっと多くの遺伝子(分子)がオートファジーのプロセスの各段階に関わっていることが分かってきています。しかし、まだオートファジーのすべての過程、分子機構が解明された訳ではなく、今後の研究成果が待たれるとのことでした。解明が進めば、より医療分野などへの応用が広がることが期待されます。
 阪井先生の講演スライドでは、顕微鏡下でオートファジーのプロセスに関わる分子が顕微鏡下で標識され、細胞(酵母)内での局在が見事に示されていました。比較となる異なるミュータント間(遺伝子情報が違うため、特定の注目分子を生成できない株)での分子局在の違いによって、注目分子の機能が解明されていく様子を大変興味深く拝見しました。
 また、オートファジーとは直接関係はありませんが、蛍光タンパク質を発現させた特殊な酵母をメタノール細胞センサーとして植物の葉の上で働かせる例が紹介されました。この例はたぶん他の機械的、人工的なセンサーでは達成できない機能を有しているようです。検出可能な物質、利用可能な環境・条件などが広がれば、夢のセンサーとなるのではと期待が膨らみます。

 IIRSセミナーに続くアカデミックサロンでは、「生命科学の将来を築く若手研究者および研究指導者の育成に向けた課題と提言」がディスカッションされましたが、民間企業の社員育成と同じく昨今流行の”ティーチング”が話題となっていました。時代、世代も変わり、価値観も多様化してきているので、人材育成・教育の方法とそれに取組む意識は、民間企業、大学、研究機関など、どこでもなかなか難しいテーマのようです。

(*1)認定特定非営利活動法人綜合画像研究支援
(*2)京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻制御発酵学分野 阪井康能教授
(*3)大隅良典先生ノーベル医学生理学賞受賞のパンフレットへのリンク
(*4)通常日本語では、「突然変異体」を指すが、生物学的にはもう少し厳密に「野生型に対し、変異遺伝子を持つ菌株、細胞株」のことを指す。

2017年06月18日

働き方イノベーションForum 2017

 昨日(2017年5月30日)、日経BP総研 イノベーションICT研究所主催の働き方イノベーションForum 2017に参加してきました。「働き方改革」に関する関心は高く、大勢の参加者で大盛況のフォーラムでした。
 ”働き方改革”が”働かせ方改革”になるのではと悪口を言うマスコミもありますが、外部講師の方々の講演を伺うと社会変化の実態の方がはるかに進んでおり、「働いて頂き方改革」とさえ思える前向きの取組みに驚きました。働く側の労働に対するモチベーションも大きく変化し、また、労働力の逼迫も重なり、企業が人(労働力)を確保する大きな要因としの”働き方をどう提供することができるか?”の重要性は今後もますます増大するものと思われます。政府の掛け声よりも民間での実際の取組みが進んでいるとさえ思えるくらいでした。
 テクニカルには、ICTを活用した業務改善と効率向上、時間の削減をモバイル、クラウド、ネットワーク共有などで実現する例が多く紹介されました。スマートフォンやタブレットを現場、外出先で有効に用いることにより帰社後の報告書作成、データ分析などの後作業を大幅に削減し時短と業務の質・量を同時に改善する、最先端の会議システムによって参加場所フリー、ペーパーレス、リアルタイムデータ更新を実現するなど...
 しかし、最も重要に思えたのはテクニカルな面ではなく、企業自身がどのような働き方を目指し、多様化する社員の価値観や抱える背景(育児、介護、闘病、高齢など)を働き方のシステムでうまくすくい取れるようにすることが理想と思われます。労働時間削減分を新たな時短雇用の人員などでカバーするワークシェアの考え方も提案され、非常に参考になりました。
 講師の方のお話しの中で、「働き方改革はコスト削減ではなく優秀な人材確保の戦略」、「日本の昔の会社はすべてブラックだった?」のふたつの言葉がとても印象に残っています。時代は動き、常識は変わることを痛感した1日でした。

2017年05月31日

不安な個人、立ちすくむ国家

 2017年5月18日に産業構造審議会へ提出された若手官僚グループによる報告書「不安な個人、立ちすくむ国家」は鮮烈でした。若手官僚が現体制や社会システムの問題点を歯に衣着せぬ文言で述べており、特に”シルバー民主主義”と表された今後の日本社会への懸念は、辛辣かつ重要と思えます。解決すべき課題である「高齢化社会」「働き方改革」などに対しこのレポートがひとつの切口として、考慮すべき内容を多く含んでいると感じます。ただし、65ページに及ぶレポートが統計の帰結として少ない選択肢を示しており、若手官僚の手で作成されたことは充分慎重に考慮すべきですが...。
 そんなとき、気に掛かっていた昨日(5/23)放映のフジテレビ「CRISIS」の中で若者テロリストが言った台詞「若者の言葉は届かない!!」が頭に思い浮かびました。声が届かないから、革命やテロに訴えるのはあまりにも短絡的と...。しかし、シルバー民主主義が若者をマイノリティーとしてしまう可能性を秘めていることを心に留めておきたいと思います。

2017年05月24日

今日(2017 5/15)の「ガイアの夜明け」は参考になりました。

 今日のテレビ東京の日経スペシャル「ガイアの夜明け」は、大変参考になりました。政府が検討する「働き方改革」の実現に先んじて、”専業禁止”を社是とする企業の登場にはとても驚かされました。”副業可”が最先端と思っていたのですが、ずいぶん先を進む企業も現れたものです。また、複業採用という考え方も斬新で今後働く側の選択肢が増えていくことが期待されます。いずれにしても自分価値の認識と向上が益々重要な時代に突入したようです。
 しかし、世の流れで一つの仕事(主業)の就労環境はかなり是正され、労働時間が削減されても副業で”働き過ぎ”などと言うことにはならないのか少し心配になってしまいます。今回のテーマの「人生100年」と「働き方」は、私の年代にとっても身につまされる問題でまもなく余生と思っていられなくなりつつあるということですね。

2017年05月16日

ブログ始めました

働き方改革、新技術、シェアリング・エコノミーなどの研究開発・調査過程の概要をご報告するブログを始めました。

2017年05月15日