資金調達に新潮流?

 ベンチャー企業の資金調達は、主にベンチャーキャピタル(以下、VC)に頼る時代からクラウド・ファンディングが加わり新しい面白い方法が現れたと思っていたら、またまたイニシャル・コイン・オファリング(ICO)と言う新手が現れ、何とVCからの2倍以上の資金がこの方法で調達されているようです。
 何でも、開発が上手くいった暁に開発予定のソリューションあるいは物(以下、開発予定製品)を使える権利を与える約束で資金調達すると言うことらしく、この権利の約束をトークンと称して販売するそうです。ただし、トークンの定義はホワイト・ペーパーと言われるベンチャー企業のパンフレットにあたるもので示され、通常の投資、例えば新株購入権などとは全く異なり、事業価値そのものを先取りして販売・購入すると言う感覚で、商品を先行販売する形態に近いため、未だ投資や金融取引としての法規制がありません。ベンチャー企業では会社自体よりその開発予定製品に期待される価値があるので、まだ形となっていない開発予定品を先取りしてトークンとして商品化する訳です。クラウド・ファンディングでも目標金額まで資金が集められれば、表示した開発予定製品やイベント参加権などを実際に手に入れられることと似ています。しかし、大きな違いは、投資する側がその資金を仮想通貨で支払うことにあり、クレジットカード情報などを提供せずに安全に支払とトークン入手が完了するため、投資に対する心理的障壁が大きく下げられていると思われます。
 先日(11/25)、またビットコインの分裂が伝えられ、仮想通貨自体の価値の安定や普遍性が危惧される面もある中、時代の先駆者の間ではある種のブームとなっているようです。投資する側もトークンの値上りを期待できること、仮想通貨による手軽で安全な投資であることに加え、先進的な投資方法であることがとても魅力的に映るのでしょう。
 しかし、資金調達する側はVCからより、ずいぶんと楽に大金を集めているようで、規制のほとんどない錬金術の危うさを感じざるを得ません。ベンチャー企業の起業家がVCの厳しい課題(製品開発、知財、販売、競合、資金計画など)に答え、乗り越えるうちに事業の持続可能な必要条件を整える場合も多いと思われ、安直な資金獲得はスタートアップ時点での準備、知恵、戦略不足などを招き、資金面ではロケットスタートでありながら、肝心の事業面の計画完成度は些か怪しいのではと心配するのは余計なお世話なのでしょうか?

2017年11月28日