働き方改革と企業の競争力強化
2017年6月28日、日経BP社主催のHuman Capital 2017の基調講演「日経Smart Work」プロジェクトスタート宣言パネルディスカッション「働き方改革と企業の競争力強化」を聴講してきました。パネラーは、BTジャパン社長の吉田晴乃氏、経産省産業人材政策室参事官の伊藤禎則氏、慶応大学大学院教授の鶴光太郎氏の3名、モデレーターは日経新聞の瀬能繁氏で、(1)どのような働き方改革が企業競争力を向上するか?、(2)具体的な取組みは? などをテーマに約70分のパネルディスカッションが行われました。
BTジャパン社長の吉田さんは、経団連初の女性審議委員会副議長等の肩書を持つウーマノミクスのパイオニアとして、特に女性の働く環境、働き方に関して、社内での実践を含め多くの具体的な提案を示し、特にテレワークの有効性を強調されていました。その中で、今の経営者は個人に残されている10分、10分・・・・を集めて力(大きな労働力)とすることが仕事、これが生産性革命に繋がると言っていたことがとても印象に残りました。ICT活用による生産効率向上などとよく言われますが、根源は働く人達の時間を如何に効率良く結集できるかなので、10分、10分を集めると言う考え方にとても共感を覚えました。
経産省参事官の伊藤さんは、現状の働き方改革実現会議の提言が長時間労働の是正で初めて罰則付時間制限を決定し、今後の一億総活躍社会実現に向け、時間、場所、契約などに縛られない柔軟かつ多様な働き方の実現を目指すとの政府方針を示されました。また、今後は働き方だけでなく人材つくり革命をキーワードに個別最適ではなくトータルパッケージで雇用制度、教育・人材育成、社会保障などを連動した対応が必要と。政府としては、働き方改革が働き手と企業が相反しないように導きたいとのことでしたが、働き方改革が、働かせ方改革や働かない改革にならないよう祈りたいですね。
慶大教授の鶴先生は、今後、日本の働き方がメンバーシップ型や無限定正社員システムからの脱却し、時間当たりの生産性向上を目指す時間や場所などを選ばない働き方へと変わっていく場合、人事評価制度の大幅な改革(人事改革)と働き方改革を両輪で進めることが重要で、従来の評価よりはるかに変数の多い複雑な評価方法(先生は多変数連立方程式になると仰っていました)が必要となるとの企業の人事部門の方々には少々厳しいお話しでした。
パネルディスカッションの最後に、一般的に働き方改革はトップダウンでと言う方の多い中、吉田さんが「現代のトップは企業リスク管理・対策・対応で忙しいので、働き方改革は現場から(中間管理職から)」と言われたのはちょっとした驚きでした。外資系企業故でしょうか?
講演後、Human Capital 2017の展示会場で総務省のブースに伺い、政府での働き方改革は、総務省、経産省、厚労省、国交省の4省が連携して取組んでいると伺いました。総務省、国交省は見落としていたので、今後は注意を払っていきたいと思います。