宅配クライシス

  宅配クライシスなどという言葉が新聞でも踊りだしました。インターネット通販による宅配荷物の急増に対して、流通・運送業界は効率化による対応が追いつかず、加えて労働力の逼迫、人件費の上昇、社会的・倫理的要求の強い労働条件の改善に苦慮しています。
 そんな中、Amazonは日本で独自配送網の構築をスタートし、大手流通企業への委託を中小への直接委託、さらには個人の活用も視野に入れた取組みを目指しています。欧米のAmazonではすでに一部の地域で学生などを運び手とした個別配送のシェアリング・エコノミーが実現しているようです。ドローンでの直接配送の実験といい、技術、ビジネス・モデルの両面から小売り、流通を革命的に変えていくAmazonの知恵とパワーに感心します。
 しかし、最近のニュー・ビジネスが想定外のことで不都合を招く例が多く、流通・運送においては荷物の紛失、破損、運搬中の事故、宅配先でのトラブルなどが心配されます。Amazon、Uber、メルカリなど、ニュー・ビジネスにおいては想定外の参加者により事業者の予想を超える事態で急成長後の躓きを経験しているようです。多くは善良でない参加者と事業者側の対応の受け皿の不備とマンパワー不足が問題のようですが….
 日本では佐川急便が宅配メイトと言う形で新しい労働力確保に取り組んでいます。集配拠点や営業所から数㎞範囲の最後の配達を自転車などで主婦、学生などが1日3〜5時間の時短勤務など自由度の高い就労時間で仕事ができると言うものです。飲食、小売りなどのパート勤務よりさらに自由度の高い勤務体系です。これも「働き方改革」ですね。ただし、報酬単価が低いのが気になります。
 他の新しい働き方の提案も多くの場合、不足する労働力の確保と共に安価な労働力の調達が目的とされていることが懸念されます。余った時間で稼げるというようなイメージは働く側、雇う側ともに変えていき、自由度の高い働き方でも労働力の提供として、正当な対価で評価されるようになることが必要と思います。ますます働き手が不足する時代になっていくのですから。

2017年06月25日