新しい社会基盤生む環境

 最近、政府広報のTV-CMで「マイナンバーカード」による子育てワンストップサービスが頻繁に流れています。個人情報の保護や個人情報の国家統制などの心配を乗り越えて鳴り物入りで導入された「マイナンバーカード」がやっと利用者側の利便性向上を期待できる活用が始まりましたが、何ともスローペースの展開です。
 世界を見渡すとこのような社会インフラが素早く展開される例をいくつか見つけることができます。「マイナンバーカード」と同様の皆国民番号制では、クロアチアなどが非常に進んでおり、利用者の利便性向上(各種公的申請のインターネット化)はもちろんのこと、自治体行政窓口の業務効率の大幅向上(窓口業務人員削減として1/3~1/10)、保存文書等の激減などの効果を上げています。さらに、民間のスーパーマーケットのポイントなどまで個人カードで貯めることができるようです。また、中国都市部では、キャッシュレス化が劇的に進み、外出時には財布よりもスマホと言う環境が整ってきており、スマホによる決済の比率は何と98.3%(日本はたった6%)にも上ります。ポイントは、アリペイ、ウィーチャットペイの二大勢力が提供するモバイル決済で、QRコード+アプリと言うところが肝です。この方法では販売する店側がQRコードのみを用意すれば良く、高価な決済端末を持つ必要がありません。このため、露天の屋台のようなごく小規模な販売店も導入することが可能となります。合わせて、政府側は携帯電話をスマートフォンのみに絞るなどの社会基盤の統一で後押ししています。離島の搬送実験などで注目のドローンの実用実験、AI併用で劇的進化をみせている車の自動運転などは、シンガポールが都市内での実証実験を多く受け入れています。ドローンの規制を比較してみると、シンガポールでは7kg未満なら無許可で飛ばせますが、日本では安全性などの観点から200g以上のドローンは航空法の規制対象となっており、無許可で飛ばせるのはわずか200g未満の超小型ドローン(主としてホビー用)です。7kgの重量が可能であれば、ドローンにいろいろな機能を搭載して実証実験が可能となり、災害時の代用信号など各種活用が検討され、街の中で実験されています。
 日本は戦後75年となり、いろいろな社会基盤が老朽化しています。また、既存の基盤が整備されているため、規制や運営体制などが硬直化してなかなか新しいシステムが一気に普及することが難しいようです。前記の3例では、クロアチアは1990年に独立した新しい国、中国は中国共産党による一党指導体制の中央集権制、シンガポールは議会内閣制ですが実質人民行動党(PAP)一党による経済的繁栄を最優先する政治体制が維持されていることが、新しい社会基盤の急速な浸透の大きな要因となっていると思われます。中国、シンガポールの共通点は、必要と思われる社会基盤改革に国家が迅速かつ優先的に規制緩和や新たな規制改革を行える点です。特にシンガポールは政府機関が積極的に外資の都市型実証実験を受け入れる体制を整えており、外資の導入を促進し発展の大きな基礎を築いています。厳しい国家統制は困りますが、ちょっと羨ましい環境とも思えます。

2018年01月26日