新しいビジネスモデルの包囲網、税と規制

 インターネットの普及が個人と個人、企業と個人を繋ぐ方法のハードルを大きく下げ、スマホがそれをいつでもどこでもの極々身近なものへと進化させて、購買行動やサービスに対する利便性・対価の考え方を衝撃的に変化させました。実際の購買行動においては、デジタルギアや家電大好きな私も、先ずは登録しているメルマガで情報を得て、ネットで調べ、価格.comでどこで買おうか吟味して、ネット注文と言うケースがとても多くなりました。昔は、秋葉原(なぜか小さい店舗好きでヨドバシには滅多に足を運ばず [笑])、ビックカメラ有楽町店、ヤマダ電機LABI新橋店、ヤマダ電機池袋総本店が大のお気に入りで、数時間カメラ、パソコン、家電などを見て歩くのを散歩と称して、休日ひとりで出掛けるのが楽しみでした。しかし、物色して歩く楽しみは別として、モノとして趣味性のないもの、まだ詳しくないものはネット調査からそのままネット注文することが非常に多くなっています。
 店舗を構え、商品を展示し、よく教育された販売員を配置してモノを売ると言うことが非常にコストの掛かることも分かっているので、タダ見は申し訳ないと思い、価格交渉にかなり対応してくれるヤマダ電機などでは昔ながらの買物の仕方を楽しませてもらったりしています。しかし、価格に関しては、価格.comの最安値がベースな訳ですから、お店側は堪ったもんではありません。多少の差なら、ポイントアップなどで近づけてもらい店舗で買うようにしているのは、いつも散歩をさせてもらっているお礼の意味もありますが...。
 そんな環境ですから、Amazonなどが取扱製品をどんどん増やし、出品する企業、店も続々と増えているのはリアル店舗で販売を展開する企業、店には大きな脅威で、いよいよそれに対する包囲網が検討され始めました。リアル店舗からすれば、ネット通販(EC)は商品展示をリアル店舗にただ乗りしていると言う認識になるのはある意味当然で、悪意がなくても現在の消費者動向は大きくその方向に傾き、リアル店舗での苦戦が続いています。唯一無二の製品を自社のリアル店舗と独自ネット販売するAppleのような形態は断トツの製品力が必要で、通常のコンシューマ向け製品では消費者の嗜好の多様化が進んだ現在ではほとんど不可能に近く、製品力のある製品をつくるメーカーでもネット通販と一般販売店(リアル店舗)を併用する場合がほとんどです。さらに、販売店に価格統制などをすると独禁法に抵触するので問題はより複雑です。
 商売、事業の観点からみると消費者に恩恵を与えた者が対価を得ると言うことが正しいと思われますが、この点でリアル店舗がショールーム化して販売時の利益を得られないことは正当ではなく、悪意のない今風の消費行動が不公平を生み出しているとも言えます。消費者が店舗を調べ歩いて製品および価格の比較をして購入する場合は、製品を調べることや価格の安い店舗を見つけるまでの労力に対して良い製品や安い購入価格という恩恵が直接消費者に還元されので不合理は感じませんが、リアル店舗がショールーム化している現状ではとの疑問が湧いてきます。とすれば、表向きは、平等な競争をするためには、ネット通販(EC)に対して税金を課して不公平感を是正すると言う発想かと思いますが、税の考え方は意地悪くみると「大衆が不満を持たない論理(屁理屈)がある取りやすいところから獲る」が一番やり易いことは消費税がなかなか上げられないことからも明白です。ただし、税金だからと消費者には直接関係がないと安心していると、税分がネット通販(EC)価格に反映され安いモノを買える可能性が下がるとの危惧もあるわけです。
 現状比較ではそんな危惧もあるわけですが、ネット通販(EC)の発達で、製造者と販売店の間にあった卸の業態がなくなり、流通の中間でのマージンがほとんでなくなったことで、消費者価格が下がったのは大きな恩恵ですが...。
 もうひとつの新しいビジネス包囲網は、Facebookが現在苦境に陥っている個人情報、フェイクニュース、不適切な広告などの問題です。インターネット、スマホの威力で個人と個人が容易に繋がれる、また、広告収入で運営するビジネスモデルが確立されたために利用者には費用負担がない、と言う素晴らしいものですが、運営企業に個人情報が集中する、集中すれば広告の効果が高くなる、そしてこの個人情報や広告などを悪用する者が現れる、と言う流れです。自由でスマートな場に悪意の参加者が現れ、不都合、問題、最悪は犯罪が起きることは、新しいビジネスモデルの成長期の中盤から後半で必ず起きることで、この時点で適正な規制が導入され利用者保護がなされれば定着し成熟期へと向かいますが、消費者保護が不完全な場合は急速に衰退してしまいます。Facebookの今後は、SNS全体の大きな方向を示す者として注目する必要があると思います。現状では、せっかく個人と個人が便利に繋がるインフラに近いレベルまで成長してきた新ビジネスモデルですので、現状の問題点を乗り越え、クリエイティブなコミュニケーション・ツールとして更なる最長を期待しますが、どこまでクリエイティビティーを保てるかが心配なところです。
 新しいビジネスモデルと言う意味では、仮想通貨、ICO( Initial Coin Offering )がすでに規制の風にさらされていることはご存じのとおりですが、こちらも今後どのような展開となるか注目するところです。

2018年04月18日