シェアリング・エコノミーの難所

 大きなビジネスチャンスを生み出すシェアリング・エコノミーですが、大きくなる際にいくつかの難所があるようです。
 一番の難所は既存勢力や規制との戦いです。米国から始まり世界70ヶ国、450都市以上で普及しているUber(配車アプリ)ですが、日本では未認可の旅客運送行為は白タク行為として取締りの対象ですし、香港でも既得権益のタクシー営業権との対立で普及が妨げられています。本来、余剰の自家用自動車の運送力をアプリを用いたマッチング・ビジネスで安価で利用し易い、あるいは利用しにくい場所でも利用できる利便性を構築するものでしたが、Uberドライバーを生業(職業)とする人々も多く生まれ、ビジネス・モデルは大きく進化(変化?)しています。民泊にも同じような現象が現れ、余剰施設の共有のレベルから新しい宿泊施設ビジネス「民泊」へと変化しています。
 第二の難所は、想定外の悪意の利用者の参加です。Uberドライバーの中には善良でないドライバーも紛れ込むようになり、運営サイドはドライバー審査強化などに取組んでいますが、急速な拡大になかなか追いついていないようです。また、ビジネス拡大と共にUberドライバー側の収入減少などの不満も増大し善良なドライバーの確保自体も課題が多いようです。民泊では、宿泊者のチェック機能の甘さが悪意の利用者に突かれ、何と犯罪(振り込め詐欺など)のアジトとして用いられる場合も出てきました。善意の利用者だけならば、安価かつ便利に加え、新しい出会いのような楽しみも提供してくれるシェアリング・エコノミーですが...。新しいビジネスですので、完成形まで幾多の改良の余地があると思いますので、工夫を加えて当初の既存システムとの優位性を保ちつつ、安価、安全・安心を実現してほしいものです。
 個人と個人を繋ぐモデルですので、利用する側は事前のコミュニケーション、評価サイト確認などによるセルフ・チェック、運営側は想定外が安全・安心と社会的規範を脅かさないような管理体制を利用者拡大のスピードに遅れないように構築していくことが重要と思われます。
 そう言えば、フリマアプリで現金を額面以上の金額で売るなどということも今年起きていましたね。ニュービジネスでは過去のモデルがないので、想定外が現れる可能性が高く予見しにくいのが事実ですが、マイナス要因だけでなく事業拡大にプラスの想定外もあるのが面白いところなのでしょう。

2017年08月13日