企業統治・マネージメントと法令遵守

 大相撲でいろいろな不祥事が報道されていますが、人気スポーツ(?)のため、小さなことまでマスコミに大きく組織論のような論調で伝えています。しかし、最近の企業不祥事などを見ると、今までの日本式の組織運営システムが、「規則や契約が無くても、阿吽の呼吸で」では廻らなくなっていることを示しています。技術・権利、思惑・利害などが昔よりも複雑絡み合い、雇用環境も終身雇用が崩れて非正規雇用や委託業務による外部組織の活用による効率化が進み、従来は組織に留まっていた各種の情報、ノウハウ、知見を完全に組織内に守ることも困難となっています。
 組織体制は形だけは欧米並みにマネージメントと企業統治(コーポレートガバナンス)を分離する委員会等設置会社が増加し、法令遵守(コンプライアンス)の徹底も叫ばれています。また、不祥事調査やハラスメント対策では常設の危機管理委員会や外部調査委員会などが設置されていますが、組織体制の変化に比べて従業員との雇用契約は未だに古き良き高度経済成長時代の日本流のままです。ジョブ・ディスクリプションを明確にした個別の雇用契約を上級社員とは交わす必要が今後はより強まってくるのではないでしょうか。副業許可、同一労働同一賃金の新しい労使関係の時代に向けて、上級社員と企業間では、責任・業務範囲、情報・秘密の保持共有範囲、業務形態、報酬などをもっと細かく契約で約束する必要があると思われます。社則が企業・組織内の憲法とすれば、この個別契約がコーポレートガバナンス・マネージメント、コンプライアンスの法律(社則を補う細則)となるでしょう。
 大相撲関係の報道の中で、「大相撲は、興業か?、スポーツか?、相撲道か?」などの議論や意見がいろいろ交わされていますが、たぶん公益財団法人日本相撲協会にとっては「興業」、親方の根本の指導理念は「相撲道」、力士は「スポーツ」と言うのが近いところではないでしょうか。しかし、だからといって大相撲の組織に対するガバナンスやコンプライアンスが徹底できないのはおかしなことで、力士と相撲部屋の関係が古い徒弟制度のような形で運営され、日本相撲協会が相撲部屋を個人商店と見立てて束ねた商店街のような寄り合い所帯のユルい組織に見えてしまいます。力士、親方、役員などの階層毎に内容の異なる契約をきちんし、その役割が異なることを明確にするような方法も改革の一案ではないかと思います。
 その分野におられる方からするとお門違いかもしれませんが、日本カヌー連盟で起こった薬物混入の不祥事も日本的な信頼関係に期待した甘い組織や競技会運営が事件を防げなかった一因と思えます。欧米は多民族国家が多いため、日本より厳しい契約社会になっていると思われがちですが、世代間や業種、地域などで価値観が多様化している今、コーポレートガバナンス、マネージメントやコンプライアンスをきちんと徹底するには、個別の雇用契約をもっと重視することも必要ではないでしょうか。

2018年01月24日