スパコン有力ベンチャーで不正
ベンチャー企業の資金調達が困難な日本で、事業内容、技術力、将来性などが非常に有望視されていたベンチャー企業で不正が行われました。とても残念です。
AI・人工知能時代に向け省エネ型スパコンを液浸方式と言うユニークな方法などで実現したペジー・コンピューティング(PEZY Computing)の社長が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金詐欺を働いたというものです。多額な費用を要するスパコン開発で資金調達にベンチャー・キャピタル(VC)を使わず、主にNEDOの助成金や科学技術振興機構(JST)による融資など公的資金を用いていたとは、詐欺の事実よりむしろそのことに先ずは大変驚きました。さらに、NEDOから数億円規模の複数の助成金を認められていたことも重ねて驚きでした。また、民主党政権時代の事業仕分けで「一番じゃなきゃダメなんですか?」と蓮舫議員が言ったことも思い出しました。15年ほど前のサラリーマン時代にかなり大型の新規装置開発の際、親会社の研究所が要素技術開発と初期の試作装置を製作するため、やはりNEDOからの助成金の助けを得ましたが、3年間で数千万円程度であったと記憶しています。国の推進する重要な科学技術関連事業とは言え、1社に数億円のプロジェクト複数とは...。こうなると本当は交付側の選考基準、実行管理・成果報告方法などもどうなっているのか少し疑問が湧いてきます。国立の大学、研究所などが独立行政法人となり経営の効率化は進んだようですが、事業収益性が不透明で開発が長期に及ぶとしても進めるべき大きな開発テーマや基礎研究の受け皿、組織設立、人材確保などが段々難しくなり、外部や民間への助成金・補助金の交付の形が増えているのかもしれません。
PEZY Computing は、今後のAI・人工知能の発展・普及による大幅な電力逼迫を予想し省エネ型スパコン開発を目指したベンチャー企業で、2017年の世界スパコンランキングの演算性能ランキング「TOP500」でExaScalerとPEZY
Computingが共同開発した「暁光」が4位、消費電力性能部門「Green500」において同様の2社が共同開発した「菖蒲」が1位を獲得しています。着実に成果も出している企業ですので、今回の事件をきちんと償い正しい方法で世界トップレベルのスパコン開発を継続してもらいたいと思いますが...。